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ガーデンでの生活を記録したり、報告書をボク用にまとめたり。
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    イイガカリ

    “お互いに傷つけ合い、火をつけあい、タイクツを殺し続けて。
    そして、いざという時には培った炎で敵を迎え撃つ——”

    正しさや間違いじゃなく、楽しさで突っ走るボクを
    最も傷つけたくないドールに選び

    “——そんな胸熱な物語……最高じゃないですか!”

    正面からぶつかり合えることを喜んだドール、アザミが

    “……すみません。何か間違えてたら、言ってください……”

    ある日を境に変わってしまった。
    一体いつから?どこで?当の本人は、何も語ってはくれなかった。 だから、拳で確かめて、全て理解しようと
    思っていたのに。







    グラウンドへ向かう道中、ボクの前をただひたすら無言で歩くアザミの後ろ姿を眺めながら、ボクは両手を頭の後ろで組んで退屈そうに歩く。

    「弟子ができたんだって?」
    「…………」

    その背中に言葉を投げかけても、アザミは振り向きすらしない。

    「修行の一環でウサギとか食わせてない?大丈夫そ?」
    「…………」

    相変わらず、冗談を笑ったり、ツッコミを入れるそぶりも無い。 アザミの弟子であるシャンティも事情を問い詰めたことがあるらしいが、こんな感じだったのかな。

    「すげー腕ついてたじゃん。ボクもあんなの欲しいな~」
    「……そう、ですか」

    やっと声を出したかと思えば、誰かと会話をするのが今日が初めてなのか?ってぐらい、不器用で生ぬるい反応だ。思わず、上の方で二つに結っている髪の束を掴み、ぐいっと後ろに引っ張る。

    「聞いてる??????」
    「……聞いてますよ」
    「あ。弟子クンがそのうち殴りに行くってよ~?背後もっと注意しとかなきゃ~」

    わざとらしく、本気で心配している感を出しながらさりげなく『弟子』の現状を伝えてみるけれど…

    「…………」

    本当に、どうしちゃったってのさ。



    *



    そんなこんなで決闘開始。 幾度も手合わせの中でも変わらない、ボクとアザミの決闘ルール。

    『戦闘不能になったら負け、魔法魔術なんでもアリ』

    なのに、戦い方は随分変わってしまった。
    ボクが繰り出す攻撃を、ただ防ぐだけ。防ぐ手段として反撃こそしてくるものの、派手さ、面白さに欠ける。燃えるような、「次はこの手を使ってやろう」と奮い立たせるような一撃が飛んでこない。 それと同時に、(最近はサボってたけど)たったの三か月ほど森に籠ったぐらいの成果が、アザミの前では全く無意味であることを、ただただ無機質に、思い知らされているようだった。

    “断言します。このままだとあなたは絶対に私に勝てません”

    アザミが何も言わないので、過去にアイツが言ったことを脳裏で再生させる。 あの時は…まだボクが、”他のだれか”を理解しようとして足掻いていた時期だった。 だから戦いの時も、アザミが次に何をしてくるのか必死に読もうとしてた。 そんな時アザミがくれた言葉が

    “……あなた、『自分のペース』はどこに行ったんですか?”
    “あなたはあなたのやりたいことをすれば良い。これが答えです”

    だった。
    ……こっちにはああ言っといて、じゃあ今の立ち回り方はアザミのペースなの?

    結局、この決闘はボクが勝利した。 いつもなら余裕でかわせるはずの一撃を、アザミが真正面から受けてしまった。 わざと当たったのか、別のことを考えていたのか、体調が悪いのかはわからないけど、勝ったという気持ちにさえなれなかった。

    ……これが、アザミのやりたいようにやった結果なの?

    きっと、そう聞いてもアイツは、そうだと答えるだろう。安全な方法を選んだとかなんとか。
    だから

    「アザミなら、ガーデンを面白く、してくれると思ったのにさ」
    「…………」

    攻撃をいなすように、会話を無言で受け流されても

    「やめちゃいなよ生徒会なんて。校則スルーして楽しいことやろーよ?」
    「…………」

    とにかくペースを乱すような言葉をかける。 どれが答えかは、アザミと今まで過ごした時間の中にあるはず。 いつか、別のドールが言っていた。諦めずに言葉をかける。

    「…魔王になりたい、勇者になりたい。で、今のアザミは何?」
    「…………」

    諦めるもんか。 例え、相手が触れられたくない過去に、触れることになっても。

    「これがシキ君との修行の成果なんだ?」
    「…………っ」

    倒れているアザミの拳に、ぎゅっと力が入り 「……私は」 上体を起こしながら、振り絞った声で聞けた言葉は

    「私は……もう間違えたくない……それだけ、なんです……」

    やっぱり、こればっかりだ。

    「…じゃあ何が正しいの。規則に従って、つまんないお仕事すること?」
    「……わかんないです、正しいことなんて」
    「なら間違えるのも、間違えないようにするのもムリじゃね」

    ようやく。 ようやく言葉が伝わった。返ってきた。 ボクは会話を続ける。

    「……そうかも、しれませんね。
    でも……自分自身が原因にならないことなら、できます」

    ……は?
    自分自身が原因にならない? それってつまり『イイコぶる』ってこと?
    身体が、ふつふつと熱くなる。
    そんな品行方正なドールが見たくて ボクは、アザミと友達になったと?
    好戦的なシャンティが、アザミの弟子になったと?

    ボクが、キミにコアを託したと?

    「私は……気を抜いたら、楽しんだらやらかしたら、周りに迷惑をかけてしまうような奴なんです」

    ズキリとコアのあたりが痛む。

    「だから……自制し続ければ良い。我慢すれば良い。それで間違いが起こらないのなら……安いものです」

    ぷつり、と糸が切れたように、ボクは後先がわからなくなる。 「ああ。うん。へぇ。そう」 無意識に、いつもより低い声音で吐き捨てる。

    「楽しんだら?迷惑で?」

    大きく乱暴に、一歩踏み込む。
    ……まるで。

    「間違えたら?やらかしたら?迷惑で?へぇ?」

    さらに一歩踏み込む。
    ……そんなの、まるで。

    「か、カガリ……?」

    怒りが一周まわって、口角だけが上がった歪つな表情を繕う。 アザミの胸倉を掴み、ありったけの感情を爆発させる。

    「そうだよ!!クソ迷惑のカス野郎だろうさ!??」

    無我夢中でアザミを地面に倒し、跨る。 楽しんだら、周りに迷惑をかけるヤツの気持ち。 間違えるぐらいなら、何もしなければ良いと投げ出す気持ち。 痛いほどにわかるよ。 でも、何もしなきゃしないで結局間違えて… ボクの知らないところで、 最も傷つけたくないドールのコアが壊れてしまった。 取り返しのつかないことが起きてしまった。 だからボクは正しいも間違いも捨てた。 ひたすら楽しいことに溺れることを選んだ。

    「っ、な、なんでそんなに……! 私はただ、自分が間違えたくないと言うだけで——」

    確かにアザミは、自分のことを話している。
    でも、その言葉は必要以上に胸を突き刺す。
    タガが外れても、アザミなら理解してくれると思っていたのに
    まるで「そっちには堕ちないぞ」と、遠ざけられているような気がした。
    そのとらえ方が正しいか、間違いか。
    ……そんなの、もうどうでもいい。

    「だったらもう、一生間違えなくていいようにしてやるよ!!」

    感情がぐちゃぐちゃになった。
    失いたくないものも失って、新たに集めた遊び仲間も一体欠けて、
    さらにもう一体、近いうちに欠けようとしていて。
    全く、なんて楽園なんだ、此処は。

    ナイフを振り上げる。
    もう、間違えるところまで間違えようかな――




    “……大馬鹿者”


    ”人格コアは破壊されなかったから大丈夫だとでも?”



    ”もし当たりどころが悪くて壊れていたら?”




    ハッと目を見開く。
    ………最近、こういう事が多い。 特定の行動を取ろうとすると、身体が勝手に、過去の”声”を思い出してしまう。 今聞こえたのは……ククツミセンパイ。 形は違うけど、ボクが命の危険を省みない行動をとったと知られた時に、かけられた言葉だ。
    その瞬間、さっきまでめらめらと燃えていた炎が、すーっと引いていくのを感じる。 相手を許したわけじゃない。怒りが一時的に「無」へ置き換えられたと言ったほうが適切かな。 ただただ、その気がなくなった。 でも、代わりに何をしたら良いかもわからず、再びナイフを持つ手が、わなわなと震えはじめる。 どう向き合えばいいのか、どう対処すればいいのか……

    結局ボクも、”正しい”を探してるじゃないか。

    それをアザミに打ち明けようか? さっきまでしようとしていた事を慌てて謝ろうか?
    いや。ごめんの一言で片づけられる問題じゃない。
    そもそも何がごめんなんだ。許していないのはこっち……

    もう、わけがわからない。

    ボクは結局何もせずその場を去った。



    *



    あれから、アザミとは顔を合わせていない。アイツのことを考えては、気が滅入る日々だ。
    やっぱり謝ればいいの?でも謝ってどうするの? 「ボクもキミと同じように、間違えないようにするね」って?
    嫌だよそんな、ボクが今迄してきたことを全部否定することになるじゃないか。 こんなのちっとも、ボクらしくない。

    そして10月になり、チーム・グレ☆グレのドール、ホムラがガーデンを去った。 イブキの時と同じように、静寂がまたひとつ増えて、チームはただただ、衰退の一途をたどる…かと思いきや、去り際に彼女がとんでもないことをしでかしてくれたので、また別の機会に纏めよう。


    Diary078「イイガカリ」
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