ボクは、 他のドールの人格コアを呑んだことがある。
他のドールに人格コアを託したこともある。
だから、コアを呑んだ側が”最も傷つけたくないドールのコアを呑む”という、ガーデンの最終ミッションを達成した場合、
犠牲になったドールの人格コアの復元を願えることも、
復活したドールは、コアを失った当日の記憶だけを失った状態で、
次の日の朝、目覚めることも”体験”している。
ただ、
コアが破壊されたあと、ドールの人格が変わってしまう場合もある。
それは、
最終ミッション達成者が、人格の復元以外のなにかを願った場合。
最終ミッション以外の目的とか事故で、コアが破壊された場合。
そして多分…最終ミッションに失敗した場合。
いずれかの理由で人格が変わってしまったドールには、嫌というほど会ったことがある。
でも
そのドールが周りの反応を見てどんなことを思っているのか、
人格が変わってしまうというのは、どんな感覚なのか。
……それを、ボクはまだ知らない。
カサカサ。
遊びに行かせていたウサギのバニラが戻ってきた。 使い魔のノームじいちゃんは煩いからグレ☆グレ団の活動室に放置中。 生命維持の為に食べ物等で魔力の補給が必要だけど、あそこならおやつのストックが大量にある(元いたくいしんぼう達がかなりの量を持ち込んでいたから…) でもバニラはちゃんとした食事が必要だし、誰かに世話を頼むわけにもいかない。
元々ワンズの森に住んでたコだし、連れて来たんだ。
好き勝手遊びに行っても結局同じ場所に戻って来ちゃうなんて、ボクと一緒だな。
でも…………ごめん。
転移奇跡を使い、バニラの視界に入らないところに移動し、戻ってこないうちにさっさと済ませようと、ナイフを取り出す。
“…ガーデンは、そういうことでもしなきゃ得られないものだってたくさんあるよ”
頭に木霊する声を必死に振り払おうとする。
“けど、ただ手法に慣れたからって、
それはその手段の深刻さから目を逸らしているようにしか…”
“…目を背けているようにしか、見えないかな”
もう散々、誰の気持ちからも目を背けてきたんだ。
今更もっと逃げようがよそ見しようが、ボクが愚かであることは変わらないんだ。
願ったって、”アイツ”は戻ってこない。
よく考えてもみろ。
そもそもアイツは、一度ボクにコアを取られてる。
本来なら、あそこで死んでいたんだ。
たまたま「コアは復元できる」手段を知ってたから、選んだだけ。
アイツは、ボクの最終ミッションに自分のコアを使うという我儘を、既に叶えてくれている。
“誰かの人格コアが『安易に破壊されてもいいもの』だなんて、
思えないし、思いたくもない”
ククツミセンパイの言うことが正しいなら、
安易に破壊してはいけないものを破壊することを、アイツは許したわけだ。
だから、本来はそれ以上望むべきじゃなかった。
それなのに、ボクは……。
……これは、愚かなりに思いついた方法。
ほんの少し、今の”彼”を識ることができる。
そうしたら、他のドールの人格が変わったときのように、
受け入れられるかも知れない。
アイツと同じ代償を払って…いや、
人格コアが”安易に破壊されてはいけないもの”だとしても
ボクの命ぐらい。
ボクを「失いたくないドール」だと言ってくれた親友との友情を壊してしまった
ボクの命ぐらい。
なんて、安いものなんだ。
「――この糸を断ち切って 物語を創る」
もう何の声も聞こえなくなるよう、 歌う。
「忘れるものは たった一日(ひとひ)だけの記憶」 …それに…もしボクが…… …カガリというドールが もっと、賢く、思いやりのあるドールになったら… …いや、そんな良い性格ばっかり都合よく盛られるわけがないか。
「楽炎の譜面を 鎮める歌がある」
……それでも、きっと今のボクよりも、上手くやれるはず……
…… ナイフを、両手でしっかりと握る。
「恐れず声に出せば それは魔法になる」
今のボクよりは、
悪くなんてならないはず………
… ゆっくりと腕を夕空に伸ばし、
そして、 体の中心から少し左を狙って 勢いよく下ろした。
Diary083「さいごのうた」
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