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ガーデンでの生活を記録したり、報告書をボク用にまとめたり。
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    同じ穴の…

    チーム・グレ☆グレ復帰後、早速「たのしい活動」をしに生徒会室に突撃した日のこと。
    どういう目的で何をしに行ったかは別途報告書が上がると思うからここでは割愛。今日書きたいのは、そこで行われていた話し合いが終わった後。

    「あ、そうだ。少しだけカガリくんを借りていい?」

    用事が済んだドール達がぞろぞろと帰る列に紛れ、ボクもチームメンバーと活動室に戻ろうとしていたら、抹茶色の服に身を包んだ、ふわりという音色で笑うドール、ククツミセンパイに呼び止められた。







    「!」 ボクは立ち止まり、声がした方に目をやる。
    ククツミセンパイといえば、前に一方的に話を遮って突っぱねてしまってから一度も言葉を交わしていない。
    というか、意図的にこっちがセンパイが居そうな場所を避けてただけなんだけど。

    「よければこれから、映写部の部室に来てもらいたくて。いいかな?」

    センパイが周りのチームメンバーに問いかける。
    そんなセンパイからの誘いを待っていたと言わんばかりに 「今日のところは解散で~!」 と、チームメンバーの答えるより先に早々に解散させる。
    どうせ活動室に戻ったところで重要なミーティングを行う予定もなかったし、皆には特にククツミセンパイと何があったかなんて喋ってないから、特に怪しむ様子もなく、メンバー達は各々行きたい場所へ散り散りになった。

    「行こ!」

    顔に何の表情の色も載せずにこう言い、ボクはククツミセンパイと映写部室に向かった。



    *



    「んー、どこにやったかな?」

    初めて入った映写部室。レンズでとらえたものを撮影すると、その景色がそっくりそのまま一枚の『映写画』となって出てくる、『映写魔道具』や、撮った映写画をしまっておくアルバムが沢山並んだ棚がある。物こそ多いけど、かなり整理整頓されている印象だ。個人用と思われるロッカーや机に貼られている映写画で、一体誰が普段使っているのかが予想できて面白い。 ククツミセンパイは自分の机で何やらガサゴソ探している。

    今日を含め、これまでチーム・グレ☆グレがしてきたことについて、言及される覚悟は既にできている。そうでなきゃ、わざわざ怒られる可能性のある生徒会室になんか行かない。
    中途半端に「イイコ」にならず、ワルはワルのまま、堂々と乗り込んだんだ。
    特にククツミセンパイには怒られとかないと気が済まないまであるし、しょげた態度をとって怒りをぶつける気がなくなってしまっては困るから、ボクは近くにあった椅子に腰かけ、特別緊張する様子もなく待っている。

    恐らく、先月にチームで書いた落書きの映写画でも叩きつけて、どういうことだと問い詰めるつもりだろう。ククツミセンパイがそれを撮影していた現場を、ボクはこっそりと見ているからわかる。 と、棚の中に入っているものを指でひとつひとつ確認しながら、ククツミセンパイが至って普段通りの口調でこう言った。

    「えーっと……カガリくんが、ぐらえとぐらなーで?団の大将なんだってね?」
    「…うん?ぐれーと☆ぐれねーどね」

    早速根掘り葉掘り聞かれるか、と身構えていたのに口から出てきたチーム名が7割間違えているので、身体の力が半分以上抜けてしまう。

    「ぐれーと、ぐれねーど、かぁ。この前の校舎の落書きも、カガリくん主導で?」
    「…うん」

    罪悪感なんて言葉知りませんけど?とばかりに淡々と答える。

    「そっか。それでね、ちょっとこれを見てもらいたいんだけど……」

    ほらきた。
    皆が困っていたり、一生懸命掃除をしている風景を見せるつもりだ。 ここまで迷惑をかけて一体何がやりたいんだと聞かれるんだろう。

    「せっかくだから全部アルバムにしたんだ、要る?」

    ほーら予想通りアルバムをプレゼント…





    ……



    ……



    ……アルバム?





    「…あ、ある……え?」

    棚から一冊のノートっぽいものを出してきたと思ったら、傑作でも見てほしそうに差し出してくる。 う~ん思ってたのと違う…… 壊れたレコードを蓄音機にかけた時の音のように、声も思考もなんか色々飛んだ。

    「……なんで?」

    差し出されたアルバムと、ククツミセンパイを交互に見ながら素っ頓狂な声をあげる。

    「……え、綺麗だったからだよ? ほら、素敵なものは残しておきたいなって」
    「…あー……あ?」

    どうしよう害悪な落書きだとさえ思われてないんだけど!?!?!?!? あれ???ボクら悪いコトしたよね??罰則も貰ったよね??あれ???
    ……いや、待てよ。もしかすると、ククツミセンパイはなんだかんだで優しいから まずはあまり怒らないようにしつつ、自分たちのしでかしを直視させようとしてるのかも! とりあえずページを開いて欲しそうだから中を見てみよう。

    確かにそこには、チーム・グレ☆グレで落書きまみれにしたガーデンの1階、2階がとても綺麗に撮影されていた。

    「この部分すごくかっこいいよね。垂直な壁に描くなんて大変だっただろうに、すごいなぁ」

    ククツミセンパイが指差したのは、チームメンバーの内、フェンとヨハイが描いた走る四足歩行の動物のような落書きだ。うーん、こうして見るとなんかのポスターにして使ったらかっこよさそう……

    ……いやそーじゃなくて。

    「……ククツミセンパイて面白いね」
    「わぁい褒められた」
    「褒めてない。ぜんぜん褒めてない」
    「そう?」

    わかってるんだかわかってないんだか…… あれ、ククツミセンパイってなんかもっとこう、皆をそっと見守るような、真面目なドールじゃなかったっけ……

    「……怒んないんだね」

    このままだとガチでアートの話で盛り上がりそうだったので、ぽつりと呟く。

    「んー……どれに対して?」

    問い詰めてる雰囲気でなく、単純にピンときていないような口ぶりで返事が返ってくる。

    「全部だよぉ」

    そもそも自分が選ぶところじゃないし。

    「ふふ、全部かぁ。……まぁ、私も怒られるようなことは大体やったし……
    ……でもカガリくんも、自分が『怒られるようなことをした』ってことは、理解したのかな?」

    落書きも、今日のことも、寧ろ迷惑かける気満々でやったし… 他のドールに3回自分を殺させた時にククツミセンパイが放った『大馬鹿者』の意味も…

    「まぁ、ボクなりには…だけど」

    …それが正しいかどうかはさておき、冷静に考えられるようにはなった…と思う。
    と自分の考えを纏めていたらスルーしそうになったんだけど、センパイってばさりげなく聞き捨てならない一言を漏らしてた。

    「……って、大体って!?ククツミセンパイが!?嘘だ?!」

    “怒られるようなことは大体やった”って何!?
    ククツミセンパイって絶対そんなことしないと思ってたのに。 ボクが見てないところで罰則フルコース公開処刑寸前スペシャルメニューでもやったっていうの!?
    動揺を隠せないボクに、ククツミセンパイはふわりと笑いながら訪ねる。

    「むしろ、こう……どんなのだと思っていたの?」
    「え?平和主義で~、ふわふわしてて~、うーん…やっぱり、ひだまり?」

    一緒に話していると、空気がぽかぽかとする感じ。鳥の鳴き声とか、風が吹く音とよく調和する声だから、時間の流れを忘れてまったりできるんだ。
    …あの時ボクに「命を大切にしないとダメ」って怒ったと思ってるから、無益な戦いとか、校則に触れることなんて絶対やらないと思ってた。

    「ひだまり……ふふ、そっかぁ」

    嬉しそうな顔をしてその話を一旦終わらせようとするので、ボクはじと~っと生ぬるい目線をセンパイに送った。
    続きは?ねぇ。続きは?

    「それで、えーっと……聞きたい?」
    「聞きたい」

    「えー……その、自分で言うのもなんというか、あれだけど……
    まずはシャロンくんにイタズラしたり、シャロンくんで遊んだり、
    部屋の壁に穴を開けて罰則をもらったり……まぁ、これはバンクがやったことだけど。
    あ、最近の話ならマギアレリックも壊したね?」

    …うーん、あのシャロンで…前ボクを魔法魔術フルコースでボコボコにしたシャロン「で遊ぶ」ってどういうことなんだろう?もしかして……ククツミセンパイはシャロンと同期だから、ボクが知らない弱みを握ってるとか!?『ムシが苦手』とかそういう………今後シャロンに奇襲をしかけられそうになったらククツミセンパイに念話を送ることにしようかな……でも、それはあくまで『シャロンが怒ること』だよねぇ…
    マギアレリックを壊すのは別に楽しい遊び感覚じゃなくても、必要なこととしてやってるドールはいるし…
    壁の穴はペットがやってるから論外だし……

    「他には、そうだなぁ……」

    首をひねって悪行を思い出すククツミセンパイ。 今回は落書きだの会議のジャマだので済んでるけど、ボク過去に一般生徒をめった刺しにしたこともあるから流石にそれには敵わ……

    「あれかな、一般生徒の首を飛ばしたり?」

    敵ってるわ。
    まるで他愛のない話を思い出しているかのように「ぽん」と手を叩きながらさらっと言ってのける。

    「随分前だけど懐かし……ん?」

    ボクの中で『平和主義のひだまり』だったククツミセンパイのイメージが崩れ落ちる。
    それはもう、大きな音を立てて。




    ガラガラ。
    ゴロゴロ。
    ドンガラガッシャン。




    「………ウソデショー……」

    とんでもない新事実に、頭が混乱するどころか回転が停止する。
    カガリはククツミさんが優等生であると願っていました。おわり。




    *




    「……思ったよりやることやってんね……しかも首飛ばした、て……ボクよりやばいじゃん……いや、そーでもないか…?」

    数十秒後、なんとか会話をつなげようとするけどイマイチ頭の中の整理ができていない。さっき崩れ落ちたイメージの画歴が散乱していてもうぐっちゃぐちゃ。そんな中ククツミセンパイは「はて…」という台詞が似合いそうな顔でなんかぶつぶつ言ってる。いやホント何!?

    「あとは…………」

    まだあるの!?!?

    「いまガーデンに居る子たちのなかで……多分、一番最初に。……人格コアを最終ミッションのために破壊されたのも、私だろうね?」

    あ、そこは破壊『された』方なんだ。

    「ふーん初めて………」

    …あれ?
    最終ミッションの為に破壊されたってつまり……

    「…………ん?」

    「私の欠けている記憶を思い出したいので、ぶっころさせてください(要約)」という願いに 「いいよ☆」って答えた…ってことだよね?
    ボクだって……3回殺ろうって提案したのはやりすぎだとしても、相手のドールに「殺しの練習がしたい」って言われた時「最終ミッションへの覚悟になるなら…」って思ったわけで、決して遊び半分じゃないわけで…?!?!あれ!??

    「……………」

    あ。ククツミセンパイが目逸らしてる。

    おいおいおい。
    おいおいおい。

    『自分で自分を粗末に扱ってもいい』だなんて、
    今の誰かの人格コアが『安易に破壊されてもいいもの』だなんて、
    思えないし、思いたくもない

    って前に言ったのは誰だっけ!?コラ~~~!!!

    「……………」

    ……ってつっこんでやろうと思ったけど、やっぱりやめて、

    「………ククツミセンパイもだいぶ雑じゃん」

    呆れた顔をしながら、これだけ言うに留めた。

    「……でも」

    だってさ。
    なんだかんだ、実はあんまり命を大事にしないドールが。 こっちに害のないはずの一般生徒ドールの首を飛ばせるドールが。 燃えるか燃えないか、たったそれだけでしか行動せず、自分の死さえも『痛みをともなう24時間睡眠』ぐらいにしか思っていないボクの命を、簡単に壊れてはいけないもののうちの一つに入れてくれた…ってこと、だもんね?

    「………へへ、そっか」

    そう考えると、口角が無意識に上がる。

    「……?」

    どうしてそんな表情になったのか、ククツミセンパイは知らないから、一瞬不思議そうな顔をするけど、やがてつられて笑顔になる。

    「…そうだ、……ククツミセンパイと…多分、同じだよ」

    “大事にしてくれてありがとう”だなんて、流石に恥ずかしくて言えないし…… あれから更に悪事を重ねてるから、もうその気持ちは期限切れになってるかも知れない。
    でも……

    「ククツミちゃんが戻ってきた時にごねた理由も…
    アルゴ先生にふたりがやられてた時に焦った理由も…
    ………人格が変わったジオに……キレた理由も……
    ククツミセンパイが、あの時怒った理由と……同じ」

    『大馬鹿者』は決して、ボクのアイデアを否定するために放った言葉じゃない。

    変わらないで。
    失くさないで。
    壊さないで。

    そんな想いが、きっとたくさん詰まった言葉。

    それをようやく理解できたことだけは、ちゃんと言わなくちゃ。

    「……うん、そうだね」

    ククツミセンパイは、ひとつひとつの言葉を丁寧に呑み込むように、ゆっくりと相槌を打っている。

    「ボクには勿体ない言葉…だなぁ」

    目を閉じて、嬉しいやら情けないやら、感謝をすべきか、謝るべきかわからず、貰ったアルバムを両手でぎゅっと抱きしめながら、貰った言葉の本当の価値を、意味を、改めて噛み締める。 そんなボクの頭を、ククツミセンパイはわしゃわしゃと撫でる。ちょっと照れくさい。

    「ふふっ……いっぱい、色々なことがあったねぇ」

    ただ思い出に浸るというよりは、色んなものが積み重なって、今ここにボクたちが居て、これからもそれが繰り返されるのだろうと心に留めるように、ククツミセンパイが言った。

    「……あ」

    センパイがなかなか撫でるのをやめてくれないので、だんだん恥ずかしくなり、話題を変えながら自分の頭も手から大きく逸らした。

    “多分、一番最初に。……人格コアを最終ミッションのために破壊されたのも、私だろうね?”
    ということは…

    「……『ククツミちゃん』が来た時って…」

    さっきからちょいちょい出てきてる『ククツミちゃん』は、ククツミセンパイの新しい人格。 話を聞くに、ククツミセンパイの人格コアが誰かの最終ミッションのために破壊されて、新しく誕生した人格がククツミちゃんで間違いないと思う。
    …それから更になんやかんやあって、ククツミセンパイとククツミちゃん、両方がこの箱庭上に存在できるようになったので「ククツミデュオ」が誕生したワケ。この話何回書いても意味わかんなくてヤバいね!

    …で、ククツミちゃんは最初、ククツミセンパイを模倣してた時期があった。その理由…今更だけどなんとなくわかったかも。

    「…コアが破壊されたらどうなるか、皆は知ってたの?」
    「そうだなぁ……みんなが知っていたことは『人格コアが破壊されると、性格が変わる』くらいだったんじゃないかな? 最終ミッションの内容を知らされた子も、あの時期には増えていただろうし」

    ……それなら、例え同じ見た目で別の性格のドールが現れてもある程度理解しては貰えた…のかな? 仮に皆が知らなかったとしたら……模倣したくなる気持ちはわからなくもない。 確実にびっくりさせちゃうから。 現に当時最終ミッションの存在さえ知らなかったボクは、人格が変わったククツミちゃんを見て『誰?』って言っちゃったもんね。

    「そもそも『コアが破壊された日の記憶が全部無くなる』なんてこと……知っていたら、書き置きくらいは残しておいたよ」

    そうそう。ボクもコアを取られたことあるからよくわかる。ボクのコアを選んでくれたのはアザミだけど、前日に「コア取りますからね」とも言わずいきなり海に呼び出していきなり決行だもん。 書き置きなんてできる状態じゃなかったから次の日覚えの無い食べ物がリュックにみっちり入ってたりしてホントキモかったんだからね!?

    「……最終ミッション達成の報酬で『破壊した人格コアを元に戻せる』ってことも、知らなかったなぁ……」

    ククツミセンパイが続ける。ボクの場合は……人格コアは復元されたんだ。だからまぁ、1日まるまる記憶が飛んでも不自由はしなかったし、前日何が起きたかはだいたいコアを持ってった本人から聞いたし……

    「…ボクはたまたまアザミから聞いてたけど……アザミが知ってたのは……先に達成したドールがいたから……?」
    「そうだねぇ。アザミさんもシャロンくんから聞いたんじゃない? 多分だけど」

    アザミの前に、何人か最終ミッションを試したドールがいたんだよね。 他にも人格が変わっていたドールがいたし…… ……もしかして、ククツミセンパイのコアを選んだのは、シャロンなのかな? ……いずれにしても………

    「……じゃあ、きっとびっくりしただろうなぁ、ククツミちゃん…」

    憶測だけど、ククツミちゃんも、多分誰かに「前のキミと違うね」って指摘されたんだろうね。自分はククツミであるという記憶はそのままなのに「違う」だなんて言われて……それで怖くなって、『ククツミセンパイ』を模倣した……と考えれば、しっくりくるんだよね。

    「…うえぇ~~~…なのにボク『誰!?』とか言っちゃった~~~~」

    まぁ、ボクがそう言ったのは人格が変わって目覚めたその日じゃなくて、大事件が起きて模倣どころじゃなかった日だけど……いずれにしてもその時はその時でいっぱいいっぱいだったからちっとも良くないけど……同じ日にククツミちゃんを「意気地なし」ってののしったりもしてるし~~あ~~~~。
    予想以上にククツミちゃんにパーフェクト大ハズレな行動をとりまくっていた事に気が付いて、机にずべ~っと突っ伏す。

    「……ふふ、そりゃ『誰?』とは思うだろうねぇ?」

    突っ伏している様子を見て、ククツミセンパイはくすくすと笑いながら、ボクの対面に座る。

    「でもさ、きっと……こういうことは言ってたんじゃない?」

    そして、両手で頬杖をつきながら、言った。

    「……「ククツミですよ」ってさ」



    “ジオ、ではあるんだけどなぁ……”



    ふと、同じように人格が変わったジオの言葉と重なり、上体をまだだらしなく机に乗せたまま、顔だけ上げる。

    「…言ってた。…それしか、言いよう…ないもんね」

    口調も服の好みも髪型さえも変わったとしても、「自分が自分である」という記憶は上書きされない。 だからこっちがどれだけ違和感でむずむずしようが、叫ぼうが、ククツミちゃんはククツミちゃんで、ジオはジオであり、それは嘘偽りない事実。
    ……わかっては、いるんだ。

    「…も~~、人格コアの事もわかんなかったから、あの時てっきり『ククツミちゃん』が『ククツミセンパイ』の素なのかと思っちゃってたよ……」
    「あ、向こうが素だと思ってたんだ? でもまぁ、私の模倣もしていたらしいし……なにがなんだか、と思っちゃうのも仕方がないよ」
    「…いや、ククツミちゃんは悪くないよ。ガーデンがケチなだけ!全部最初っから教えてくれればいいのに」
    「ふふ、本当にね」

    少なくとも、最終ミッションのことを何ひとつ理解していなかったあの頃よりは進めているといいな、と、ククツミセンパイと過去を振り返りながら思うのだった。

    「……今は、ふたりとも……存在(い)てくれてよかったと、思ってるから」

    特にククツミちゃんには、たくさんありえないことも言っちゃったけど、 ふわりと笑う、平和主義…かと思えばだいぶ「こちら寄り」だとわかったククツミセンパイも からころと笑う、諦めが悪く、アクセサリー作りが上手なククツミちゃんも、「どちらが本当の~」なんて決めたくないし、どっちが欠けても楽しくない。
    そう思えるようになるまで、ずっと力を貸してくれたククツミデュオには、頭が上がらないなぁ。

    「……なんだか今日のカガリくんは、やけに素直だね?」
    「ボクはいつも素直だよ!」

    くすりと笑った後にちょっぴりからかっているような声音で話すククツミセンパイに、ボクはわざとらしく頬を膨らませて見せた。

    「ほんとかなぁ。それなら今回の悪巧みで、誰かからのきっつ〜〜いお叱りも、素直に受けたりしたの?」

    …そう、それなんだけどね?

    「そもそもお叱りがゼロなんだけど」
    「……えっ」

    現に今だって怒られなかったでしょーが。

    「メンバーも誰ひとり呼び出されてないっぽいし」

    最もボクは怒られる前にさっさとワンズの森に逃げたわけだけど、残されたメンバーも誰ひとり呼び出されたりしてなくて、全員仲良くガーデンからの罰則を喰らった程度で済んでいる(程度、と形容するのもどうなの、ってつっこむドールは居そうだけど)

    「ふーん……そっかぁ……」

    暫くすると、ククツミセンパイが何かひらめいたようだ。

    「……そうだね、せっかくだから。カガリくんと、グレート☆グレネード団の子たちに……ちょっとした『お願い』を、頼んじゃおうかな?」

    ククツミセンパイが今日一番の100点満点の笑顔を浮かべる。
    センパイのこんな顔は初めてだけど、ボクはこれがどんな顔なのかよーくわかる。

    これはね、何か『燃える(楽しい)コト』になりそうな予感がする時の笑顔。

    例えばドールの悲鳴とか、かっこわるい姿とか、そんなものが沢山見れるんじゃないか?ってわくわくする時のやつ!いつもボクがやってるやつ!
    ククツミデュオが笑っているといつもホッとするんだけど……今回ばかりは身の危険を感じた。
    実際、お願いの内容がその予感が見事的中するようなものだったなんて……長くなっちゃうからこれはまた別のページに書くことにしよう。

    それにしても、ククツミセンパイってもしかして…ボクと似た者同士だったりするのかな?という考えも過る。そうなると、入学した瞬間に一番最初に声をかけてきたのがククツミセンパイって……さては同じニオイを嗅ぎつけたんじゃ……?



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