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ガーデンでの生活を記録したり、報告書をボク用にまとめたり。
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    いま、夢を熱く燃えたぎらせ

    1月も半ばを過ぎた頃。
    ガーデンが新学期に向けてなにやら準備を進めているようだ。でちでち言ってる謎のヤツが中心になっていて…他にも見慣れない存在を学園のあちこちで見かける。
    マギアビースト討伐でお世話になっているアスナロさんの対策本部にも、全身武器庫みたいなヤバいのがいた。

    出会いもあれば別れもある。 11月に箱庭の外からやってきたイオサニの宇宙船で、箱庭の外を目指す…つまり、卒業していくドールがちらほら。

    『一緒に海に行けなくてごめん』

    そのうちのひとりが残した手紙と、安全な場所を求めて旅立った別のひとりがくれたマギアレリックと鉢植えに目を移し……

    「……旅……かぁ」

    ボクはある決心をする。

    「へ? 旅をする?」

    それを一番最初に打ち明けたのは、勿論友達のドール、アザミ。
    ボクも遂に箱庭の外へ旅に―――










    ―――出ない。


    ただ「修行の旅をする」と言えば聞こえが良いからカッコつけただけで、箱庭から出るつもりは毛頭ない。修行の果てに挑みたい相手がここに、目の前にいるんだから。

    「というわけで、レベルアップの為しばらく留守にするので探さないでください」

    『勇者』を目指すアザミを退屈させない『魔王』となる、と豪語したはいいが、今のところアザミとの決闘では0勝2敗。強くなり方はドールそれぞれだけど、アザミと同じものを見聞きしておくのも大事かなって思って、かつてアザミがやった「森籠り」をボクも経験してみよーってワケ。

    「それがあなたのやりたいこと……なんですよね?」
    「うん、そだよ」

    わざわざ確かめる必要なんてないだろう、とばかりにボクは即答する。

    「そうだカガリ。せっかくだし、ちょっと付き合ってくださいな」
    「?」

    年が明ける前に決闘した瞬間からだったか、アザミはボクを呼び捨てるようになった。 相変わらず口調が丁寧なので違和感があって面白いけど、それ以上に、とても耳に心地よい。

    さて、アザミがボクを連れて行った場所は… 決闘に勝利した報告書を投入すると、願いを叶えてくれる…かもしれないマギアレリック、サングリアルの置かれている場所。願いが叶うかどうかは、レリックから吐き出されたジュースの味で決まるんだけど、叶ったことを知らせるジュースの味が普通にマズい。

    「そーいえば、ここのジュースと対策本部のゲロマズドリンク、どっちのがヤバいかな?」
    「美味しくても美味しくないことがあるサングリアルのジュースの方がちょっと、ねぇ?」

    おいしくてもおいしくないことがあるって何。早口言葉?

    対策本部にもドールを強くするドリンクバーがいつしか置かれるようになったんだけど、こっちの飲み物も、口直しができないレベルでマズい。
    …マズい飲み物の話はこれくらいにしておいて…

    「あ、それってこの前の決闘のやつ?」
    「ええ。特に使う予定はなかったけど、どうせならと思いまして」

    果たしてどんな願いを叶えるつもりなんだろう。 アザミが目を閉じてから願いを口にするまで、じっとその様子を観察する。

    「私たちの進む道に、陰りがありませんように——」

    あまりに抽象的な願いで吹き出しかけた声を、ガコン、という金属製の容器をレリックが吐き出す音がかき消した。 アザミは容器の蓋を開けるもそれを飲まず、おとなしく中身を飲まれるのを待っている容器をただ見つめるだけ。「どしたの?飲まないの?」と問えば

    「これを飲めば、願いが叶うか叶わないかわかる。不味いものであれば願いは叶い、美味しいものであれば願いは叶わない……」

    なんか語りはじめた。今日のアザミは変にマジメだなぁ。

    「あなたはどっちだと思います?」
    「え~?コレが叶えられる規模じゃない気がするけど」

    道の向こうに陰りがあるかどうかなんて、進んでみないことにはわからない。 大量のサイリウムを出すのとはワケが違う。

    「でも私、思うんですよ」

    アザミは話し続けながら…なんと、中身をひっくり返す。 これでジュースの味は、足元の潤った地面にしかわからなくなった。

    「飲まなきゃ答えはわからない。つまり結果は誰にもわからない……でしょ?」

    そんなクサい台詞、面と向かって言われても。…応援してくれてんのかなって思うと、照れ臭い。それに…

    「わかっちゃったらつまんないもんねぇ」

    なにひとつ障害がない旅路なんて自室をぐるぐる回るようなものだし、かといって、先の困難が全部見えていても刺激がない。 結局ボクが、ガーデンを何もかもぶち壊そうと思えなかった理由もこれだ。 たとえ誰かのごっこ遊びだったとしても、相当手が混んでいる。だから、これはこれで愉快だ。色が足りない部分は、ボクらの我儘で、ボクらの物語で、塗りつぶしていけばいい。

    「これは私たちが歩む道。結果は私たちの手で掴み取る。だから——」

    アザミが一呼吸入れ、まっすぐにボクを見る。
    ボクも、アザミをまっすぐ見た。

    「白黒つけるのはガーデンでも、サングリアルの他でもない——私たちだ。そっちの方が『燃える』と思いません? カガリ」

    まったく。 本当に、飽きさせない勇者だな。
    ……キミと出会えて、よかった。
    そう言葉にする代わりに、しっかりと頷く。

    そういえば、あと一月もすれば、ガーデンに入学してちょうど一年になる。 あのときはガーデンは雪で覆われていた。まるでなにも書かれていないノートのように。白銀の綺麗な世界の下に埋もれている真実をなにひとつ識らなかった。面白い場所だと思った。 あれから特定のエリア以外では雪はすっかり見なくなり、随分と見える景色が変わったけど、まだまだ掘り起こさなきゃいけないものが眠っている。 やっぱ、箱庭は面白いな。

    「ボクが戻ったら、一緒にたくさん火~つけてこ~ね!アザミ!」

    ボクのいちばんの願いを託す。
    サングリアルではなく、最高の友達に。



    Diary058「いま、夢を熱く燃えたぎらせ」
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