「オレちゃんが望む『素晴らしい楽園』っていうのは……
誰も犠牲にならない、誰も自由を奪われない……
そういうものなのです」
それが、先生の望みなんだね。
「ガーデンが止まれば、あとはオレちゃんを倒すだけ、なのです!」
だったら先生が犠牲になるのは違うよね。
「もう隠しても意味ないから言いますけど……
オレちゃん、ガーデンが大っ嫌いなのです!ガーデンに作られた自分のことも含めて!だからぶっ壊してほしいなのです」
「でもオレちゃん、キミたちのことは好きなのですよ。だから手は抜きたくありませんなのです。本気を、出したいなのです」
せっかく先生が、ボクが求めているものをくれたのに。
本気で向き合おうとしてくれたのに
「オレは先生としてキミたちが乗り越えるべき壁になる。キミたちなら乗り越えられるって信じてるよ」
あのとき、すぐに返事ができなくてゴメンね
結局何が正しいか、誰が悪いか、あれからずっと考えてみたけど
……全部、どうでもいいや。
みんなが正しくて
みんなが間違ってて
みんな一生懸命。
だからボクは 全部、楽しむコトにしたの。
全力で。
ガーデンがぶっ壊れることも。
先生と戦うことも。
勝ち目があるのかわからない闘いに挑むことも。
或いは、勝って先生を倒すことも。
この、命まで賭ける 最高にバカげた最高の舞台を、精一杯楽しんであげる。
ボクは机の引き出しを開け、奥の方にある包み紙を取り出す。
包み紙の中身は、もう使い道がないと思っていた。
『歓楽』という名前がついている飴。
今のボクにこそ、必要だろう。
ぽいっと口に入れ、齧る。
鏡の前で、マズさを形容するためヘンな顔をする。
…これも、楽しむということ。
アルゴ先生。
いつか、キミの価値観をひっくり返せる日が来るといいな。
キミが友達と思ってなくても、
ボクはキミを放っておかないから。
さあ、そろそろ行こうか。
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