学校の廊下を歩く。
各教室のドアが開いていており
面識のあるドール達が、なにやら楽しげに話している。
しかし、どうだろう。
微塵も興味をそそられない。
話の内容はよく聞こえないのに 聞く価値もないぐらい、
くだらない事だけはわかる
別の娯楽を求め、歩を進める
やがて教室は無くなる。
長い長い廊下が見せるのは
壁、また壁。
右も、左も、振り返っても。
そこには壁。
話し声は、いつの間にか消えていた。
静寂だけが、耳を不快に擽った。
これは、知っているガーデンの風景ではない。
すぐに夢だと気が付いた。
夢ならば覚めてしまえ。
身体のどこかに、力が入りそうなところはあるか。
ガクン。
見慣れた部屋の、見慣れた天井へ還る。
鼓動がせわしない。
ほら、やっぱり夢だった。
けれど夜は、まだまだ長そうだ。
*
結局それからは寝付けなかった。
誰も降りてこないのを良いことに、シャワールームを独占して身体を流すついでに汚れてしまった制服を念入りに洗ったり、 いつもより時間をかけてホットココアを用意し、いつもより時間をかけて寮の階段をのぼり、いつもより時間をかけてカップの中身を減らしていく…そうしているうちに、空の色が淡くなりはじめた。 朝日がしっかりと地平線から離れるのを待っていたかのように部屋に現れた無機質な訪問者によって、先程まで迷い込んでいた世界が『それ』だと知る。 けれど、あまりにも現実とはかけ離れているその場所での感覚が、今ここに残っているはずもなく。 もしも手を伸ばして摑んだものがタイクツなら、壊せばいいだけ。
今日からまたいつも通り。
ボクは至って、いつも通りだ。
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