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ガーデンでの生活を記録したり、報告書をボク用にまとめたり。
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    楽園の炎ターテイナー

    教育実習生のグロウ先生がいなくなって間もなく、新しい教師AIが箱庭にやってきた。
    正式な教師AIなので任期は無く、ぶっ壊れるまで働かされるらしい。教師も大変だな。
    とても面白そうな先生であることがわかったので、今日はそのことを日記に書く。







    この教師AIはアルゴ先生。ボクはオレちゃんせんせぇって呼んでる。
    置きっぱなしだった台本を回収しに部室に立ち寄って一休みしていたところに先生と邂逅した。教師AIは生徒の報告書を全部読める。ここ最近ボクが書いていたことといえば、アルゴ先生が大尊敬しているグロウ先生の悪口。もう絶対これは説教タイムだろうなと思っていた。

    ところが、ボクの予想はひっくり返った。

    まずは、先輩部員をドン引きさせたオリジナル台本を褒められる。流石にこの時はからかってるのか、媚びてるのかのどちらかだろうと思った。でも

    「オレちゃんはね、この学園生活自体が、ごっこ遊びそのものだと思いますなのです」

    先生…もとい「ガーデン側のヤツ」の口からそんな言葉が出てくるとは思わないじゃん。 大げさな振舞いが信憑性に欠けるけど…その立場でただの冗談でこんなこと言えるわけがない。 初めて会った時から、炎を絵に書いたような髪の色だなと思っていたけど…

    …まさか本当に火をつけられるなんて。


    *


    「なんでわざわざ事実を都合よく書き換えたり、隠したりしなきゃいけないの?」

    こんな具合で件の台本に駄目出しをした先輩に物申した日よりも少し前…授業が再開されたあたりから ガーデンの生活そのものが、まるで芝居のようだと思っていた。 最初にそう感じた出来事はまた別の機会に書くとして、何を考えているかわからない一般生徒(おきもの)に囲まれメリハリのない話を聞くだけの時間を過ごす授業…でも必要以上に知識を求めれば……結果は書かなくてもわかるよね。
    …そしてグロウ先生。「メンタルケアなんてできていなかった」ってボクの見解を否定するつもりはないけど、消された理由はきっとそうじゃない。ただ、都合が悪かったから。

    思った通りの結末にならないから?
    演出家の言うことを無視したから?
    話の方向性が変わったから?

    詳しい理由はわからないし今更聞きたいとも思わないけど、必要のないキャストになったから降板させられた。ガーデンにとっては、それ以上もそれ以下もないのだろう。


    *


    だからこそ、あからさまに台本にない台詞を言ってのけ、恐らく台本からはみ出しているボクの価値観を受け入れた先生を、面白いと思った。
    そんな先生の野望は、「この素晴らしい楽園を、もっと素晴らしい楽園にすること」らしい。

    「あのね、もうすぐ学園祭でしょ。ボク…フィナーレでライブステージやりたいんだ。  そこで、この楽園をたたえる歌をおもいっきり歌ってやるの!」

    なので、この楽園の素晴らしさを皆に伝えるような提案をした。

    「もちろんそれで何かがどうかなるわけじゃない。でも…歌を聞いて、共感したドールが集まってくれたら、もっともっと燃えるコト、できると思わない!?」
    「あっはは!名案なのです!その歌を聴いたセンセーとドールの顔、ステージ上から拝みたいなのですよ~!」
    「やったー!!やろやろ!絶対やろ!!」

    まるで、生徒同士の遊ぶ約束のような会話がそこにあった。


    *


    「オレはね、グロウをこんな目に遭わせた素晴らし~い楽園を、もっともっと素晴らし~い楽園にしたいと思ってます、なのです」

    日記を書きながら、ボクは先生に言われたことを思い出す。

    この素晴らし~い楽園を
    都合の悪い穢れは削ぎ落され、完璧に磨かれすぎて非の打ちどころがない楽園を!
    もっと素晴らしくするにはどうしたらいい?

    答えはひとつ。


    ぶっ壊せばいい。


    完璧なものがもはや完璧と呼べなくなるまで かき乱してしまえばいい。
    口元に浮かべた笑みが広がっていくのが抑えられない。
    ボクは燃えることがあれば全力で乗っかる。
    誰かを平気で傷つけるし それ相応の見返りがあるなら喜んで命だって差し出すドールだ。

    ……でも、今回ばかりはそんなシンプルにはいかない。思い立ってすぐにできることじゃない。 ボク自身もまだそこまで強くないし、いつでもボクらを処分できるガーデンのことを…ボクは正直まだあまり知らない。だいたいガーデンどころか、自分の大切なものが何だったのかもわかってないのに。
    一番関わりの多いドールが「強くなるためには、知らなくてはいけない」と言っていた。 知るための方法は……あ~~。ここまできても、やっぱり「傷つけたくないドール」が見つからない。 日記のページはほどよく進んでいるのに。

    思えば「火を消そうとするものは、ボクが全部ぶっ壊す」 なんて、日記の最初のページに書いてたっけ。 あの時と今ではちょっと意味が違うけど、なんだかんだ根本は変わらないな。 さっき自分の考えを「はみ出した価値観」と形容してはみたものの、それを許容する存在も探せばひとりはいるものだとわかったし、ボクはこれからもきっとこのまま、変わらないだろう。

    目の前のタイクツを
    火を消そうとするものを
    いずれは、素晴らしい楽園を
    燃やして、壊して…そしてまた、
    次の『燃えるコト』を探す。




    だから…
    アルゴ先生は、壊れちゃダメだよ。



    Diary017「楽園の炎ターテイナー」
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