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ガーデンでの生活を記録したり、報告書をボク用にまとめたり。
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    翳る炎

    幾つもの糸が絡まって、
    無理やりほどこうとして
    更にきつく締まって
    どうしようもならなくなった時


    ボクならどうする?







    ――生徒会からシャロンだ。
    明日の夜、おそらくミッションにある『道化の魔盤』が出る。
    ミッションのマギアビーストだから、一筋縄ではいかないと思う。
    戦闘に出るドールも、出ないドールも、くれぐれも気を付けてくれ――


    念話で起こされた。
    …知らんし。
    今何時?何月何日?

    「…どーでもいい」

    ベッドにうつ伏せになる。


    昨日まで何をしていたか忘れた。
    何を言われたか忘れた。
    髪の結び方を忘れた。
    服の着方を忘れた。
    ベッドからの起き方を忘れた。
    忘れた忘れた忘れた。
    はいはい忘れた。
    …ぜーんぶ忘れたはずなのに、

    一番忘れたいことが忘れられない。

    はぁ…わかんない。 何も。

    いつから、こんなに面倒なことになっちゃったんだろう。
    昔はもっともっと、楽しかったはずだ。
    何も考えず、歌を歌いながら、
    次から次へとドールを殺していた遠い日々。
    殺したくないと思うドールなんてひとりもいなかった。

    ただただ、
    殺して、
    壊して、
    自分の歌に相手の悲鳴のコーラスが混ざるのを楽しんでいた。

    友情も、信頼も、愛さえも、識る必要はなかった。

    “燃えるから”
    それだけあれば、何でもできた。

    そんなボクはガーデンにとって都合が悪くなり、人格を消去された。



    再び目覚め、ガーデンに入学した。
    消された記憶のせいで、頭に常に何かひっかかるものがあったけど
    ”燃えることを見つける”という行動理念だけは、
    ガーデンにも消去できなかったのに
    今、それが消えかけている。


    友達ができた。
    友達の為に何かすることが楽しいと思った。
    消えそうになると、恐怖を抱くようになった。
    考えることも増え、面倒になった。
    友達は、最近忙しそうだ。
    友達は、ボクが知らないことを沢山知っている。
    みんなどんどん遠くに行ってしまうように見えた。
    その背中に全く追いつけないのが
    そのために行動できないのが腹立たしい。

    嫌いなヤツができた。
    嫌いなヤツと会話するのはムカつくけど、
    なぜかそれが楽しかった。
    嫌いなはずなのに、そのままでいて欲しかった。
    変わらないで欲しかった。
    別人のような仕草、表情、話し方を
    どうしても受け入れられない。
    幾つも選択を間違えた。
    次の手を考えるのもうんざりだ。

    ドールに悩みを打ち明けられた。
    面白そうだったから乗ってやった。
    苦労はしたけど、ドールが今迄拒んできたことを
    自力でさせることに成功した。
    最善の選択をしたと思っていたのに
    他のドールに否定された。
    もっと手数を、
    もっと考えを、
    もっと知識を持っているドールだったので
    自分のバカさ加減が浮彫になるだけだった。



    いっそ、相談になんて乗らなければ
    いっそ、変わってほしくないなんて願わなければ



    いっそ 友達なんてつくらなければ …


    ……そうだ。
    無理だったんだ、ボクには
    そもそも友達なんて。


    世界を守る勇者と、世界を壊す魔王が 友達になるだなんて。
    明日を滅ぼす魔王が
    特定のものだけ都合よく残そうだなんて
    誰かのチカラになろうだなんて。


    最初から、無理だったんだ。


    …のそのそと、ベッドから起き上がる。

    “燃えるか、燃えないか”

    これで十分じゃないか。
    思考を重ねて複雑に絡み合う糸なんて
    全部燃やしてしまえばいい。

    はじまりの日記にだって、そう書いてあるじゃないか。


    “気をそらせるほど、全てがどうでもよくなるほど
    この「楽園」で、ボクをもっと「燃えさせる」ものを見つける。
    ついた火を消そうとするものは 
    ボクがぜんぶ こわしてやる。”


    篝火は、自分の道だけを照らすように燃えていればいい。
    壊したくないものなんて、つくらなくていい。
    あの時とは違う。ボクは全て思い出している。取り戻している。
    もう何も奪わせない。

    もっと、
    もっと、
    もっと


    自由になるんだ。






    だって此処は楽園なんだから











    Diary070「翳る炎」
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