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ガーデンでの生活を記録したり、報告書をボク用にまとめたり。
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    ようこそ殺戮冥土カフェへ!―前編

    「カフェをジャックしに行きたいと思いまーす!」

    ボクが結成したチーム・グレ☆グレのメンバー達に号令をかけたのは、8月に入ってすぐのこと。
    寮の入り口前に、熊耳のクラート、犬耳のフェン(「耳じゃねえ」)、ちょんまげのイブキ、もさもさのホムラが集合。早速現場へと向かう。




    任務は至ってシンプル。春エリアにこぢんまりとそびえたつカフェの店主に…”お休みいただいて”、キッチン乗っ取ってタダ飯パーティー!くいしんぼうのホムラとイブキは特に乗り気。他2体は知らない。でもついてきてくれるって事は協力する気はあるんでしょ。

    難なくカフェまで歩を進められるかと思われたそのとき!

    「皆さんお揃いでどこへー?」

    この特徴的に伸びた語尾に幼い声…嫌な予感がして振り向けば…
    やば!ヒマノ・リードバックだ!
    好奇心旺盛なうえにめっちゃ強いんだけど、風紀委員だから誘わなかったんだ… ウチのチームに欲しい逸材なんだけどね~…

    「や…やぁヒマノくん!き、奇遇だね~!?」

    煽り文句のひとつやふたつかましてやれたら良かったんだけど、別に恨みがあるわけじゃないから思わず愛想よく挨拶してしまう。

    「あ、もしかして討伐ですかー?」
    「とうばつ?」

    え?なんだっけ。マギアビーストでも出たっけ…?最近端末お構いなしにしてたからなぁ…

    「ぶっきーたちはカフェにタダ…」
    「と、討伐だよ」
    「タダ飯食う草を倒しに行くんだろうが」

    フェンとクラートのフォローのお陰で、イブキは真実を語らずに済んだ。

    「よかったー。今日に限って寮にいるドールが殆どいなくて… 今から全体念話でも飛ばして討伐メンバーを募集しようかなと思ってたところでー」

    ヒマノは胸をなでおろす。ああ~…だから魔法が一日使い放題になる「マキシウム」の空容器持ってたんだ。箱庭全体に念話を飛ばすとなるとなかなかの魔力量だもんね。

    「お名前書いときますねー」

    討伐申請をガーデン側にしてからじゃないと罰則ですからー、なんて風紀委員っぽいことを口にしながら、ヒマノは鞄から端末を取り出す。彼が名前の入力に集中しているのを確認してから、フェンがボクに近寄り、小声で話す。

    「……オイ。まさかとは思うが、忘れてたんじゃねえだろうな?」
    「え?なにが?」

    鳩尾を小突かれ、しぶしぶ自分の端末を確認すると、確かに8月1日に通知が入っている。

    ――――――――――――――
    なんか箱庭内がめちゃくちゃになったでち。
    花がトコトコ歩き回ったり、
    安っぽいホラー小説に出てきそうなやつらがいたりするみたいでち。
    生徒たちには対処してほしいでち。
    ――――――――――――――

    …という、でち先生こと学園長代理のルファル先生のメッセージと共に、異変が起きているエリアなどが書かれていて…カフェには、無銭飲食をする食虫植物の軍団がのさばっているらしいでち。

    「え、みんなこれ知ってて黙ってたの!?」
    「知ってる前提で動いてんだよこっちは……」
    「てっきり…このどさくさを利用してジャックするんだと…」

    両目を点にしてメンバーに尋ねると、フェンとクラートが呆れと困惑の二重奏で答える。

    「植物の子と一緒に食べると思ってた」
    「ぶっきーはおいしいもの食べれたらなんでもいいよー!」

    ホムラとイブキも知ってはいたみたいだけど、このコたちにとっては大した情報じゃないっぽかった。 そんなこんなで風紀委員と行動しなきゃいけなくなったワケだけど、ま、しょうがないか…



    *



    「あわわ、ごめんね!今日は営業どころじゃないんだ…」

    カフェを訪ねると、ぬいぐるみみたいな姿をしている店主さんが大慌てで出てくる。その後ろに見える店内の様子は……テーブルには料理の乗ったお皿が並べられ、至っていつも通りだ…………

    ………店の観葉植物と呼ぶにはあまりに不似合いな生き物たちが蠢きながら、貪り食っている以外は。

    「や……物凄い数だね…」

    討伐に来たことを説明して中に招かれるなり、トゲとキバの生えたでかいカスタネットのような口でブランチを楽しんでいる食虫植物たちで満席になっている店内をぐるりと見渡す。

    「変身して燃やすのが手っ取り早そうですが、お店も手っ取り早くウェルダンになってしまいますからだめですねー。どうしましょうか」

    ヒマノ…ある程度やっちゃダメなことの線引きはしてるみたいだけど、ノリが「今日なにして遊ぼうかなー」のそれ。やっぱ向いてないんじゃないかなー風紀委員。

    とりあえず、店を燃やさず熱を浴びせる方法なら…ボクが使える集光魔術の出番かな?

    「試しに一匹殺ってみよっか?」

    集光魔術を使おうと両手で窓を作り、その中に架空のレンズをイメージする。少しずつ光がそこに集まると――― それが”お客様たち”の注目を浴びてしまったらしく、そのうちの一匹が素早く身体に絡みついてきた。

    「げ!」

    突然の出来事に気を取られ、魔術が中断されてしまう。両手にもしっかりと蔦が絡まり、体勢の立て直しができない。

    「チィ……ッ!」

    周りの野次馬植物が便乗して取り囲んできたところにフェンが割り込み、ナイフで斬りつける。斬られた個体はいかにも化け物っぽい茶色い悲鳴を上げ、よろめく。単体の強さは大したことはないようだけど、軍団と言うだけあって物凄い数。戦闘経験がそこそこあるフェンでもたった一体で全員の相手をするのは困難そう。

    「クソ、室内じゃ流石に分が悪ィ……」
    「仕方ないですねー…よいしょ」

    ヒマノが懐からなにか取り出す。銃…のようなものだろうか。

    「なっ……テメェまさか、”ソレ”’をここで撃つ気か!?」
    「威力は最低限にしますよー。当たらないよう気を付けてくださいー」
    「できるかー!!動けないんだってば!!」

    フェンは身体が自由だからまだしも、ボクは四肢にセンス皆無なラッピングをされてるのを知ってて言ってんの!?めでたくウェルダンされてやるものかともがいていたら… ぷつり。 蔓が突然切れた。抵抗の甲斐があったか?と思っていたら、誰かに腕を勢いよく引っ張られる……クラートだ。反対側の手にはナイフが握られている。これで蔓を切ったんだろう。

    「おおっ…やるじゃん」

    彼にとっては、ボクに言葉を返すよりも、ボクをヒマノの射程範囲から遠ざける方が先決だったらしく

    「気を付けて」

    やっと口を開いたのは、態度の悪いクソ客共と十分に距離を取った後だった。彼のトレードマークである困り顔(少なくともボクの中ではそう)はそこに無く、代わりに少し鋭くなった目つきが描かれている。ふーん、そんな顔もするのか。

    「では遠慮なくー」

    ヒマノの武器から弾丸らしきものが飛び出し、食虫植物たちの胴体に綺麗な円形の風穴を空ける。

    「これでも喰らえ!」

    援護しようとしたオトモダチ軍団に、いつも持ち歩いているデスソースを浴びせると、金切り声をあげて身を捩りのたうち回り、それを見た他のヤツらが戸惑いながら後ずさりする。

    「あり?そういやぶっきーとホムラちゃんは?」

    ボクの声につられ、フェンとクラートも辺りをきょろきょろと見回す。さっきからその2体の声が聞こえない。まさか蔓で口を塞がれているんじゃ…

    「って……オイ、テメェら」

    フェンが犬が唸るような声をあげた理由…それは彼の目線の先にあった。

    「残したまま席を立つなんてとんでもない。ちゃんと綺麗にしなきゃ」
    「おいしいおかたづけだよー」

    食虫植物たちがいなくなった方のテーブルを陣取っているホムラとイブキの口は確かに塞がれていた。 元々そこで食事されていた”お客サマ”が残した料理で。

    「あれ、これはまだぼくが頼んだことのないメニューですねー」
    「折角だからボクも”お掃除”手伝おっかな~」
    「やってる場合か‼︎ 真面目にやれ!!!!」

    “――みんな、こっち――”

    フェンが声を張り上げ、店にいた全員がピタリと制止した直後、今度はクラート控えめな念話が飛び込んできた。いつの間にか彼は、隅に避難していた店主さんと一緒に、テラス席の方を指差している。どうやらそっちが安全だと伝えたいようだ。

    「一旦退くぞ。作戦を立てた方がイイ」
    「何かここ来てから威張りすぎじゃなーい?皆で攻撃してればそのうち終わるって」
    「アレ見て同じことが言えるか?」

    フェンが後ろを見ろと顎でしゃくる。振り返ると、斬り落としたはずの蔓が復元していた。 ボクが何か言い返す前に無理やり襟を引っ張られ、しぶしぶテラス席側に退却することになった。



    *



    テラス席で作戦会議。 戦いの中で食虫植物たちを観察していたヒマノ、フェンによると、アイツらの腕…蔓の部分は斬っても再生しちゃうけど、上手く身体を狙えば大丈夫っぽい。ただ、ヤツらがそう簡単に身体を狙わせてくれるとは思えない。あの蔓の動きはかなり早かったし… 「…そういえば」 思い出したように、ホムラが口を開く。

    「真っ赤な液体を浴びてた子たち、ちょっと苦しそうだった」

    その瞬間、ボクの頭に閃きの種火が灯った。

    「ねえ!いいこと思いついた!店主さん、キッチン借りていい?」
    「ダメだよ」

    店主……じゃなくて、イブキに即否定された。
    えーっと…まぁ、これには身に覚えがある。

    「食べ物であそぶんでしょ。カガリちゃん。ダメだよ」


    う~ん、背後からめっちゃ圧を…いや冷気を…いや殺気を感じる!!!
    …いや~、前にガーデンで開催された大食い大会をね?もっと面白くしようとね?キッチン担当を引き受けてね?その、”ほんのちょーっと”ね。ラーメンを辛くしちゃって。それがたまたまイブキの口には合わなかったっぽくて…それはもうとんでもない仕打ちを喰らいましたとも…

    「…でもそれ、名案かも知れませんー。ぼくからもお願いします」

    おっと?
    ワルの親玉と風紀委員の意見がピッタリ合った奇跡の瞬間じゃん。

    「こんな状況だし…バイト経験がある子もいるみたいだから…うん、使っていいよ!」

    店主の快諾を受けても不服そうにしているイブキも、キッチンの指揮はヒマノが取ること、ボクが妙なマネをしたらフェンが遠慮なく制裁を加えることを条件に、説得させることができた。 というわけで~…


    ばばーーーーーん☆



    何体か気乗りしなさそうなコもいたけど、ぶーぶー言いながらも最終的には全員、アルバイト用のメイド服を着てくれた。だってこれからお客サマに粗相のないよう丁重に”おもてなし”するんだから!


    作戦名は…『メイドカフェ・グレ☆グレ』!!



    つづく!!
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