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ガーデンでの生活を記録したり、報告書をボク用にまとめたり。
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    進む理由

    (カガリには見えない字で書かれている)
    ※最終ミッションのネタバレ及び暴力的な表現があります

    はい、7月3日…殺し練習2日目~。





    いきなり場面飛んだじゃん。
    カガリちゃん何ページか日記燃やした? ううん、そんなこと全然なくて。
    え?壮絶な戦闘シーンで引き延ばしてからの…感動の結末!ってのを期待した? あほくさ。

    結果から言っちゃうね。1日目の結果はクソ。 まぁ、うん。今迄の訓練に比べてスリリングな戦いではあったよ?あったけどさ…いざ急所を狙う!ってところで手を抜くんだもん。この繰り返し。
    んで、ボクもボクで悪かった。空がすっかり藍色に染まったあたりで、昨日たまたま眠れなくて、一睡もしてなかった報いが押し寄せてきて戦いに集中できなくなって――

    「日を改めた方が良い」

    逃げる理由をつくってしまった。

    「ふぁ…大丈夫だって。まだまだ…」
    「駄目だ。其方が力尽きては意味がない」

    悔しかったけど正直、大丈夫じゃなかった。まさか海まで歩くとは思ってなかったし… ロベルトもロベルトで、躊躇するたびにボクが苛立って容赦なく刺すものだからわりと身体がボロボロ……だけどそっちは治癒の力…蘇生奇跡で何とかなる。が、眠気を覚ます覚醒奇跡…なんてものはないので1日目はこれにて解散。
    でもこのまま次の日も、その次の日も、なにかと理由をつけては試合を放棄されるのはボクが耐えられない。絶対飽きる。だから

    「――ボクを殺せずに一週間経ったら、ししょーの負け。 ボクの訓練は一生免除で」

    と約束させた。

    からの今日である。
    同じ場所で夜集合だったので、ボクは寮に帰らず、海辺で泥のように寝た。 夕方頃に、追加の食料を持ったロベルトに起こされて、栄養補給もバッチリ。
    でも、戦いの様子は驚くほど…え?これ昨日に戻った?ってぐらい変わらず。 お互いナイフを手に、攻める、避ける、また攻める。短い刃と刃がぶつかり合い、反動に耐えつつ獲物をしっかり握りしめ、また次の一手へ……
    次の攻撃を阻止するように手首や腕のあたりを狙って斬りつけてくる相手の動きはそこそこ素早く、何度か体勢を崩されかけた…のに、鳩尾や喉元、胸元への一撃が来るかと身構えれば、まるで硬化魔術でもかかったかのように固まってしまう。

    多分こんなことをしていても、普通に朝になるな……

    「…いつ?」
    「ん?」

    どうにかリラと決闘した話から何かこの状況を打開できるヒントが得られないかと、踏み込むステップに歌をつけるように、戦いのリズムを崩さないようにしながらロベルトに問う。

    「リラちゃんと決闘したの」
    「昨年の…10月頃だ」
    「そ」

    偶然とは重なるものだ。それか、弟子は師匠に似てしまうんだろうか? ちょうどボクが、ロベルトが成し遂げようとしているものを達成するために 箱庭で最も嫌いなドールとして、傷つかず、変わらず在り続けて欲しいと願ったあのドールのコアを、“識ってこい”という言葉と共に授かった月と、同じだ。

    同じように、前に進んだつもりになって
    同じように、燻っていたのか。

    ほんの一瞬、あの日のことを考えていた隙をつかれ、ロベルトのナイフが勢いよくボクのナイフを弾き飛ばす。キン、という音で我に返る。拾いに行こうと伸ばした手を掴まれると、空気が突然重くなったように感じ、砂浜にぐしゃりと崩れ落ちる。
    …影に触って動きを封じる縫合魔術とは違うみたいだ。これは……恐らく浮遊魔法で、ボクを「逆向きに浮かせている」…つまり、重力で地面に押し付けている。
    それにしてもそんな使い方をパッと思いつけるなんて、前に誰かに使ったことがあるのかな。
    武器もない。立ち上がることもできない。ロベルトにとって今が絶好のチャンスだった。 片手でナイフを構え、手首を握っていた方の手を、確実に深い傷を負わせられるよう肩へと移す。 すると空気の重みはパッとどこかへ消えたけど、間髪入れずナイフが脇腹目掛けて突っ込んでくる。

    このまま一気に刺してしまえばボクは手も足も出ないまま終わる――
    しかし―――

    ナイフは鳩尾に触れる一歩手前で止まり、それ以上進むことはなかった。
    せめて触れろ。
    ロベルトの両手が震えている。仮面の向こうで歯を食いしばっているような息遣いが聞こえる。

    ………。

    何のために命をくれてやってると思ってるんだ?
    その言葉を浴びせようとしたその時

    “それは貴女も同じでしょうにィ”

    !!

    “何のために小生のコアをくれてやったと思ってるんですかァ?”

    頭の中で、ボクが呑んだコアの持ち主の憎たらしい声が聴こえてきたような気がして …不本意にもそれが、ボクの次の行動を決定づける大きなきっかけとなった。
    強めの発光魔法をかけた片手をロベルトの目の前に翳し、退かせる。 目が眩み、腕で目元を覆い闇に隠れているほんの僅かの間に、準備を整える。

    「!」

    ロベルトが目を開き、再び体勢を立て直そうとして、大きくたじろぐ。この反応を見るに、どうやら上手くいったようだ。

    「其方は…」
    「あの時のこと、全て忘れてしまったんですか、ロベルトさん」
    「リラ…!?」

    本来、ボクのクラスコードでは使えないはずの変装魔法、続けて変声魔法を使って、ロベルトがかつて決闘をした張本人…リラになりすました。丁寧語を使い慣れていないせいか個人的にはモノマネの出来は60%だったけど、魔法のお陰でリラの「声」の模写はしっかりできていたようで、うまくだますことができているようだ。

    「…これじゃあ、私が殺され損じゃないですか」

    どこか寂しそうに、困ったような顔で笑ってみせる。
    ……いや、でもうーん、リラちゃんこんなこと言うかな。これヤクノジが見てたら…彼自慢の、腕っぷしがめっちゃ強くなるマギアレリックを装着した状態でぶん殴られそう。 でも…事実として、間違ってはいないはず。

    「ヤクノジさんも、とても落ち込んでいました」

    か、どうかは知らないけど!!! 多分落ち込む!! 落ち込め!!
    激しく動揺しているロベルトに詰め寄り…すぎないように、ゆっくり、ゆーっくり歩み寄って、ふわっとこう、それっぽ~く手を差し出す。ああ…演ってみたはいいけどこそばゆいな…このキャラボクに全然合ってないもん……

    「もう一度、思い出してください」

    ボクが差し出した手に、ロベルトは”ナイフを持っていない方”の手を伸ばす。

    「や、そーじゃないんだわ」

    あ~あ。解釈違いリラが出来上がっちゃった。この日記をうっかりヤクノジが読みませんよーにー。 ロベルトの手をピシャリと叩き落し、ナイフを持っている方の腕を掴み、ぐっと自分の胸元へ引き寄せる。

    「!カガリ…!?」

    あ、やっば。変装魔法って誰かに触ったり触られたら解けるんだった。決闘の場面を再現してあげようと思ったのにな。まあいいや。そろそろリラごっこも厳しかったし、変声魔法も解いちゃえ。 リラに姿を変えた時ほど、ロベルトは驚いていないようだった。それもそのはず。この魔法はロベルトのクラスコード・グリーンの魔法だ。流石に気づくだろう。
    …まぁ、相手のビックリ度合いなんてお構いなし。ボクがやることはただひとつ。

    「ま、待て、それでは以前と……」
    「同じにしたのは」

    こっちもダラダラと状況を引き延ばす気はない。息を止め、ロベルトの腕を両手で勢いよく引き寄せ、ナイフを鳩尾にできるだけ深く突き刺す。

    「オマエ…だろ」

    悲鳴をあげるかわりに、言葉を紡ぐ。 全身を駆け抜ける痛みと苛立ちで、醜悪な顔になっていたことだろう。 早くこの痛みが終わるように、体内を流れ、命を奏でる赤い五線譜を断ち切るように、最後の力を振り絞って刃を引き抜く、 引き抜いた勢いで、砂の上に仰向けに倒れる。

    「カガリ!!」

    自由になったロベルトが駆け寄り、傷口に向かって手を伸ばす。 すかさずボクは震える腕で遮る。多分蘇生奇跡を使おうとしてる。ここで傷を塞いじゃ意味がない。

    「……オマケ」

    本来なら、これは殺したうちにカウントしないのが正解だったんだろうけど 焼けつくような痛みに直面している状態で、これに耐える回数を増やす選択ができるほどの根性は流石に残っていなかった。ボクの優しさに感謝しろ~~?

    「……あと2回」

    でも、勿論これで終わりなわけないよね。次からは、自分の意志で殺りに来てよね。 やっと振り出しに立っただけで、目的のものはまだ何も手に入ってないんだから。
    折角火をつけておいて、がっかりさせないでよね。


    Diary067「進む理由」
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