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ガーデンでの生活を記録したり、報告書をボク用にまとめたり。
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    ようこそ殺戮冥土カフェへ!―後編

    前編はこっち







    まずキッチンにて、ヒマノとボクが極辛ピザトーストを作る。ヒマノがパン、ボクがスパイス担当ね。 ホントはトッピングをホムラも手伝うはずだったんだけど、なにしてるんだろ?まぁいいや。
    焼き時間などを手短に伝えると、ヒマノは「ポケットを叩くとビスケットが出てくる魔法」を使い、大量のビスケットを大皿に乗せはじめる…こっちがトーストを焼く工程に入る頃には姿を消していたが、幸いここにイブキはいないので怒られる心配もない。
    あのコは何してるかというと、テラス席の店主さんがヤツらの標的にならないよう見張ってもらってる。

    「オイ。ビスケットがなくなりかけ……何だ、テメェだけか」

    そこへ、ホール担当のフェンが登場。

    「何でこんなの着なきゃいけないんだ」

    って文句言ってたわりには、メイド服姿が様になってる。そもそも普段からスカートみたいなの履いてんじゃん。 ヒマノが持って行った、大皿から盛り上がるほどのビスケットがもう底をつくらしい。でもアレは前菜に過ぎない。メインディッシュは…ちょうど焼きあがったところだ。

    「とっても”アツアツ”なのでお気をつけくださぁい☆」

    意味深にニヤリと笑いながら、盛り付けたピザトーストの皿を渡す。数分経たないうちに第二陣が焼けたので、ちっとも手伝いに来ないホムラの代わりにボクが持って行く。 ところが…

    「マ。」
    「わっ!?」

    お客様のテーブルに置く前に、小さな、変わった形の口の食虫植物?に一皿持って行かれた。あれ?こんなコいたっけ?そのコはピザトーストをペロリと呑み込むと、そのまま石のように動かなくなり、そして…

    「マー―――――ッ。!!」

    めっちゃ炎吐いた。そして運悪く傍に座っていたお客サマに命中!更にひとあし先にフェンが提供したブツを口にしたヤツらも、炎を吐き合ってお互いの顔面を燃やしてる。おもしろー! 植物だからまぁよく燃え、炎はあっという間に胴体にも及ぶ。このままだとカフェの内装ごとウェルダンかと思われたが、お客サマたちは叫びながら水場を求めて退店してっちゃった。
    いや~、引火する前に火元の方から外に出てくれるなんて、意外とマナーが良いお客サマだったね☆

    バシャッ

    突然足元に水がはねた。探す間もなく、犯人がボクのすぐ隣で

    「……フォリア。念話魔法使っていいよ」

    と、ちょっと面倒臭そうに言う。水をかけたのはホムラ。最もかけた相手はボクじゃなくて、マーマー騒いでるちっちゃい個体の方だけど。え、助けちゃうの?

    ――辛い! 辛すぎるよこれは!
    辛み成分はほどよくあるからこそ美味しいんだ!
    だいたいレシピは見たのかい⁉︎ 独創的なアレンジも時には必要だけどまずは基礎を修めてからじゃないとあーたらこーたら以下略…――

    生き物は、念話魔法で如何にお出ししたピザトーストが危険であるかを訴えかけている。

    「ホムラちゃんってば、この短時間でコイツらと友情深めちゃったの!?」
    「ううん。この子はワタシの使い魔」

    使い魔と呼ばれたそのコは、ホムラの髪の毛の中へ帰って行く。フォリアという名前らしい。 そういえばボクも、使い魔をつくってもらえる道具を手に入れてるんだった。チームの事にすっかり夢中ですっかり忘れてた…

    「おい、料理の方はどうなったんだ」
    「あ、いけない」

    やば!キッチンガラ空きだった!ホムラは早速次の料理をつくりにキッチン……じゃなくて食事テーブルから空のお皿を何枚か回収し、戻ってくる。

    「おかわり」
    「おかわりじゃねえ。持ち場に戻れ」

    トーストをお客サマの顔面にご提供しながらフェンが一喝すると、今度こそホムラはキッチンへと足を運ぼうとしたその時!誰もいないはずのキッチンの扉が勢いよくバーンと開く。

    「まっったくシロートはこれだからこまるよねぇ?」

    出てきたのはイブキ!!うそ!?ちょっとの隙をついてキッチンに侵入したっていうの!?

    「おきゃくの舌をうならせる料亭の味はこういうのをいうんだよー!」

    大人数用の大皿にクソデカオムライスが盛られてる。この短時間でどうやって!? 彼は「料理奇跡」が使えるんだろうか(そんな魔法多分ない)。 気難しいシェフのように偉そうな歩き方で、クソデカオムライスを、お客サマ達のテーブルへドン!う~ん、確かにふわふわ卵とケチャップの良い匂い。でもこれじゃあ普通に美味しく食べちゃわない…!?

    ぶっきーの料理を口にした植物たちは…ガチ泣きを始めた。今迄こんな美味しいものを食べたことがないと言わんばかりに号泣しながらクソデカオムライスを貪り食う。その涙の洪水たるや、身体じゅうの水分が全て出て行きそうなほどだ……

    ぐしゃ。

    「あ」

    文字通り、水分が全部身体から出てったっぽい。干からびて死んでるわ。バカかな? あ、一口食べただけで美味しさのあまり生命活動を停止してるのもいる。食べるのをやめたくても、美味しいのでやめられない。いやこれ奇跡じゃなくて呪詛。暴食呪詛。

    「ホ…ホムラちゃん、これは流石につまみ食いしない方がい」
    「おいしい」
    「あーーーーーーーーっっっ!!!」

    食べ物のことになると瞬発力が跳ね上がるホムラをボクは止めることはできなかった。けれど流石にドールに対しては無害らしい。じゃあボクも一口貰っちゃ…

    「カガリちゃんはおかたづけ。つぎの料理のじゃまでしょー?」

    イブキに腕を掴まれ、もう食べることができなくなってしまったお客サマを指す。まー、ぶっきーが来た以上はもうキッチンで暴れられないし、正直こっちの方が火事のリスクがなくて効率的だから、ボクはしぶしぶ死骸処理担当に回ることにした。 次から次へと動かなくなる同胞たちを見て流石に危機感を覚えたのか、退店しようとする臆病者共に、優秀なホールスタッフが立ちふさがる。

    「残すのは良くねえよなぁ? 草ども」

    フェンは懐から長いロープを取り出すと、大きく振り、数十匹の身体を捕える。そのままだと普通はほどけちゃうんだけど、先っちょが結び目をひとりでに作って植物たちを逃さない。
    …これもしかして…便利アイテムの「マギアレリック」?

    「もっとたべるよねー?」

    もはや無銭飲食を大歓迎しているシェフ、イブキ。両手には新たな暴食呪詛が!! …あ、ふざけて言ってるけど、イブキとホムラは奇跡や呪詛は使えないんだってさ。 植物たちはガタガタと震える。でも本能には抗えない。結局『シェフのおすすめ』の虜になってしまい、とっても幸せに逝っちゃいましたとさ。よかったね☆



    *


    トチ狂ったシーン続きで胃もたれしてきちゃった?じゃあちょっと癒しの空間へ移動しよっか。 イブキがシェフとして覚醒しちゃったので、テラスにはクラートと店主さんだけ。

    「へぇ…ブレンド魔法でこんな事もできるんですね…!」

    ヒマノからお裾分けされたビスケットをしげしげと眺めるクラート。これがどのようにつくられたのかを店主さんから詳しく聞いていたところだった。

    カフェでは飲食の他に「ブレンド魔法」という自分だけの魔法を教わることができる。 戦闘向きではないけど、日々の生活をちょっとだけ面白くしてくれる、可愛い効果のある魔法なんだ。 ヒマノのビスケット魔法も、その一つ。

    「営業時間中にご褒美ジャーキーを持ってきてくれたら、教えてあげられるよ」
    「今度持ってきます。実は、貰ったジャーキーが5枚あるんです」
    「それはちょうどいいね!ブレンド魔法に必要な枚数も5枚なんだ」

    すご!運よすぎない?…もしかして誰かから貰った?だったら早く魔法覚えてそのコに自慢しないとね。 クラートはどんなのを教えて貰えるんだろう?…魔法をかけたドールが困り眉になる魔法とかかな?
    ちなみに、実はボクも覚えてるよ。まだ使ったところを報告書に書いたことはなかったかな。
    …じゃ、そろそろ楽しい接客対応の現場に戻りまーす!



    *



    「ホムラちゃん、そっちどうー?」
    「落ち葉の味ね…」
    「突然の食レポ」

    吹き出しそうになりながら、満腹死した獲物達の死骸を外に放り出す。 ホムラはお腹の中に片づけようとしてたみたいだけど。

    「ねー!そっちあと何匹いる?」
    「んもー、おのこしするわるい子ばっかり。まだまだいっぱいあるのにー」

    カフェにいるドールに向かって叫ぶと、イブキの残念そうな回答が返ってくる。

    「よし!みんな外出しちゃって!」
    「どうするつもりだ?」
    「いいからいいから!」

    イマイチ話が見えてこなさそうなフェンに、ボクは自信満々の笑みを浮かべる。 フェンは眉をひそめると、ロープ型のマギアレリックをコンパクトに丸め(というかロープ自ら丸まって)、懐におさめたのを合図に、ボク、イブキ、ホムラも加わり、残りのお客サマを取り囲んでじりじりと外へ追い詰めていく。

    「もっと食べる? 美味しいよ?」
    「おのこしは、いけないんだよ?」
    「しめてジャーキー365個分、耳揃えて精算してもらうからな?」

    くつろぎの場となるはずのカフェが、恐ろしい虐殺フィールドであると学んだ生き残り達が、唯一の逃げ場である入口から外へと飛び出して行った。
    「おもてなし」から「おもてでろ」にプランを変更した理由は…外で待ち構えている「彼」に引き渡すため!

    「いらっしゃいませー。お待ちしてましたー」

    最後の執行人、ヒマノ!キッチンでやることやってから、銃の中に魔力をチャージしつつ待ち伏せしてたんだって!

    「こちらスペシャルデザートになりますー、チャージ2回のトッピング、おつけしましたのでー」

    店員さんっぽい受け答えも流暢にこなしながら、お店が燃えない距離まで引き寄せて…

    「ということでご注文の品です。お釣りはとっておいてくださいー」

    銃声…というかもはや爆発音と共に、スペシャルデザートは無事、残りのお客サマの胃袋に叩き込まれた(物理)みたい!これにて~…討伐完了!
    …あ、地面が焦げちゃってる。でもお店は無事だし、このエリアが燃えたのは初めてじゃないし、セーフ!



    *



    「さあ、沢山食べて行ってね」
    「いただきまーす!」

    こうして、無事、ボクらもタダ飯にありつくことができた…「カフェを危機から救ったんだから、店側からも報酬をくれてもいいだろう」と店主さんに掛け合ったフェンのお陰なんだけど…何か今日随分コイツに手柄を取られてる気がするー!
    イブキの「死ぬほどおいしいクソデカオムライス」をドール達に振る舞うため、必然的にキッチンをお借りすることになった(何故かボクはイブキに料理の基本を叩き込まれながらめちゃくちゃ手伝わされた)し、『カフェをジャックし、キッチンも占領してタダ飯をいただく』ミッションはめでたく達成!
    風紀委員と鉢合わせはしたけど、うまくいってよかっ…

    …あれ?そういえばヒマノは?

    「おまちどおさまー。こちら本日限定メニュー『無銭飲食の代償』ですー」

    ヒマノが外から入ってきた。なにやら大きくておぞましいものを引きずりながら。
    それを見たボクは腹を抱えて笑い、逆にフェンはドン引きし、クラートは慌てて店主さんの身体を背けさせ、それを視界に入れないようにしている。イブキは食べ物じゃないとわかると、興味をなくしたように食事という名の日常に戻る。

    ヒマノが持ってきたものは……さっき追い出した死骸だの、バラバラになった茎や葉、顔の一部だの、燃えカスだのがひとまとまりに……くっついている、異様な物体だ。

    なんでも、討伐した物証をなにかしら提出しないといけないらしく、持ち運びやすいように、ひとつにまとめた…らしい。

    「一匹だけ持って行っても、軍団を仕留めた証拠にはなりませんしー…」

    魔力が使い放題なのを良いことに、消耗が激しい「代替奇跡」を使ってくっつけたらしい。
    教科書には『欠損した部位を何かで代替できる奇跡』って書いてある。例えば人差し指が吹き飛んじゃったとき、短い鉛筆を代替奇跡でくっつければそれが指っぽく動いてくれるんだって!ボクは使えないんだ。
    それにしても、穴の空いたお腹から顔が生えてたり、くっつける方向がぐちゃぐちゃだったりして散々だ。まー別にいいのかな?死んでるし。
    でち先生の通知にあった「安っぽいホラー小説に出てきそうなやつら」の討伐の果てに、ガチホラーなやべーものを見せられるなんて、チーム・グレ☆グレの物語第一話としては最高のオチだね!
    それじゃエンディングに、ブツがセンセーに回収されるのを見届けながらホムラが放ったひとことをどうぞ!


    「ひとつになれてよかったね」



    Diary072「ようこそ殺伐冥土カフェへ!」
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