きっかけは、センセーから貰ったナイフでみんなを『ちょっぴり』ビックリさせようとしたとき…彼が目にも止まらぬ速さでそれを弾いたのがもうめちゃくちゃかっこよくて!弟子志願しちゃいました!
それでは訓練内容を纏めていきます⭐︎
訓練その1:意識の集中
「まずは……ここに座ってのんびりしましょう」
ボクは「ナイフの訓練をつけて欲しい」と確かにお願いしたはずなんだけど…最近
『記憶が一日飛ぶ出来事』があったから自信がなくて確認したところ
『武器を使うには、まず自分の体の使い方から』だそうで…
「緊張して体が硬くなると、いざという時にやりたいことができなくなってしまいます。全身の力を抜いてリラックスすることを覚えるための訓練だと思っていただけたらと」
確かに、歌を歌うときも力が入ってると上手くいかないですね!さっすがししょー! ボクはそのままグラウンドに座り込んで、言われるままにすこーしずつ意識自分の外に向けて集中し、
気がついたら
チョコレートの海で泳いでました。
「カガリさん、眠たいようでしたら、訓練はやめにしますか?」
ししょーの声で再びグラウンドに戻ってきます。
寝落ちしたっぽいです。
訓練その2: ししょーをさがせ!
グラウンドに座ったまま、気を取り直して次の訓練へ!
「さて、私は今、どこにいるでしょう?」
きっとさっきの『意識の集中』の続きだと思ってボクは咄嗟に両手で自分の目を覆い
「うしろかな〜?」
と尋ねると
「当たりです」
同じ位置から声が聞こえて来ます。
ボクは歌が好きだから、自分で歌うのは勿論、周りの音が「歌」のように聞こえちゃうこともあるんです。その歌が、どこから、どんな風に聞こえてくるかは、そこそこ敏感だったりするんですよ!
「戦いの中では、視覚以外でも相手の動きを感じ取る必要があります。
音だけでなく。風の流れを感じたり。匂いがヒントになることもあります。
そうした感覚を身に着けるために、こんなことをしてみたわけです」
ただ相手を見てぶん殴りに行くだけではダメ。 そもそも相手が早すぎて見えないことだってある。 これは、ボクが初めて死を経験したあの決闘でも身をもって学びました!
「自分の長所を把握しているのは素晴らしいことです。
では、まずは長所を伸ばす方向で進めてみましょうか」
耳がいいことを伝えると、ロベルトくんはこんな提案をしてくれました。
どんな風にトレーニングしてくれるのかな?と待っていると、足音こそしないけれど、衣擦れの『歌』が僅かに聞こえ、彼が今ボクの正面にいることがなんとなくわかります。ところが
「さて、私は今、どこにいるでしょう?」
「んん…?」
明らかにおかしい位置……ボクの右側から声は聞こえて来ます。
これは少し推理が必要ということかな?体は正面にあって、声は別の位置にあるということは…
「ロベルトくん今首だけとれてる?」
渾身の回答!
「面白い発想ですが、違います」
1秒で却下されました。 でも、そんなことより、返答したロベルトくんの声がちゃんと正面から聞こえてきたことにびっくり!
「仰った通り、今はカガリさんの正面にいます。目を開けて、右側を見てみてください」
言われるままに目を開けると、そこには首がちゃんとついているロベルトくん……
が実は幻で、右側を見るとロベルトくんの生首が! という線を期待してたんだけど、
そこにあったのは生首ではなく、生首が生産できそうなナイフでした。
クラスコード=グリーンの生徒が覚えられる『録音魔法』をつかって、ナイフに自分の声を録音したのだそうです。そんな面白そうな魔法が使えるなんて…ボクもグリーンがよかったなぁ。
「グリーンを相手にする際は、こういうこともあるのでお気をつけください」
種明かしの最後に、ロベルトくんにこう念を押されました。 声が聞こえてくる位置が不自然に感じたら、録音魔法を疑う!覚えておいてソンはないかも。
音だけでなく、空気の動きや気配によって周りのものを感知するようにと言われて、その後も何度かクイズは続いたんだけど…やっぱりボクは音で判断するのが一番得意みたいです!
ししょーから「素晴らしい感覚です」って褒められちゃった⭐︎
訓練その3: ナイフを使え!
「持ち方は素直に持っても、逆手でも構いません。間違っても、刃を握らないように」
ロベルトししょーがこう指示します。ナイフを持つとき、ふつう刃の方は握らないんだけど、なぜわざわざ彼がこんなことを言うかというと…ボクが握っちゃったことがあるからです⭐︎
ナイフで初めて遊んだ日、それをよく思わないドールがいたので慌てて手で覆い隠して見えないようにしたときに、ついうっかり! 過去にカマイタチの爪で斬られたときよりぜんぜん痛くなかったから、まさか手があそこまでケチャップまみれになってるとは思わなかったですね〜!
「私に刃を当ててください。殺すつもりで構いません」 ししょーは死を覚悟している様子!
でもぶっちゃけボクらドールの死は、コッペとかうさちゃんみたいな生き物と違って
「1日休み」みたいなものだから、そこまで覚悟いるかな?て気もしますけど〜。
「じゃあいくよ~!!」
ボクはにこにこしながら腕まくりをして気合を入れ、ナイフをかっこよく突き出してみます。
「……予備動作が大きすぎます」
あとちょっとで届くかな?ってところで、ししょーは攻撃をかわし、鞘がついたままのナイフをボクの喉元に突きつけながらしっかりダメ出しをして…
「が、相手の行動を誘導できるという点では優れています」
しっかり褒めてくれます⭐︎
攻撃はできる限り流動的に、避けられて終わりではなく、次を想定した動きを考えると良いとのこと。 ただ殺意と勢いで切り掛かるだけじゃダメなんですねぇ…
次はなるべく素早く懐に飛び込むけれど、それでもししょーの速さには追いついていないので容易くかわされてしまいます。
「良い動きです。
前に伝えた通り、避けにくい脇腹を狙っているのも素晴らしい。しかし、今回は避けられました。今度はどうします?」
「へへっ!」
でも、これじゃあさっきと結果は同じ。避けられたら、そこが反撃のチャンスと思わなくちゃ!
ボクは素早くナイフを逆手に持ち替え、振り向きながらお腹のあたりを狙って真っ直ぐに下ろす!
「良い反転! 位置の特定も完璧です」
ししょーの制服には確かに切れ込みが入ります。 まだ制服だけだけど、これで一歩前進!
「さあ、まだ私は動いていますよ。相手をどう追い詰めるか。予想外の動きをされた時にどう動くか。その場その場の判断で動くんです。カガリさんにはそれができる柔軟性がある!」
ところで今日のししょー…ロベルトくんはとてもよく喋る気がします。
『皆の痛みは私の痛み』
この言葉が印象的なロベルトくん。どちらかというと大人しい方で、料理を作るのが好きで、自分のことはすぐ棚上げしてザ・他人優先で動こうとする……ボクが前にナイフの刃の方を持って手を切った時も自他共に認める自業自得だったのに、わざわざコストの高い『蘇生奇跡』で傷を治そうとしたり(ちやっかりボクも同じものを使えるようになってたから阻止したけどね!)……とにかくものすごくお人好しでどっちかというと堅苦しい仮面くんかなーって思ってたんだけど… なんだか仮面の下が前より随分柔らかくなった感じ。素顔こそわからないけど、今絶対いい顔で笑ってるんだろうな〜っていうのが声色から伝わってくる気がして、
「誰かを守ったりするより、こうやって教える方がスキなんじゃないの~?…それっ!」
こう問いかけながら、ボクは自分の攻撃スタイルにちょっとしたトラップを張ろうと、わざと相手から逸れたところにナイフを突き出します。
「そうですか? どうでしょうね」
「だって!声がすごく笑ってる!」
答えをはぐらかされても会話を続けるように、
警戒して距離を取られても、すかさず攻める。
戦闘と会話ってちょっと似てる気がします!
そして……戦闘中の身のこなしは、「アレ」を応用できないかな?と閃いちゃいました!
ボクは体をくるり、と回転させます。
そう、凍ったプールのうえを、スケート靴で舞った時のことを思い出しながら。
そうすれば、ナイフは弧を描くように動いて…
「っ、そう来ましたか!」
ししょーの言う『予想外な動き』を、ボクの方から生み出すことができていたみたい!
ロベルトくんが咄嗟に腕を軌道上に置いて攻撃を受けます。腕を犠牲にしたのかと思えば、 金属同士がぶつかるような音、そして自分の腕に残る痺れ……
「反応が遅れていればやられていました。
そういうこともできるのですね。参考になります」
一瞬なにが起きたかわからなくて、結局どこも傷付かなかったロベルトくんを見やると………いつの間にか、手首の辺りにナイフが仕込まれてる!
「すっごい何それ!かっこいい!!
…楽しくなってきたねぇ!」
その後何度かししょーに立ち向かう。
興奮してくると、頭の回転も、動きもどんどん速くなって…………疲れるのも速くなる。
あーあ。ボクの悪いクセ。
「少し、休憩しましょうか」
見かねたししょーにナイフを叩き落とされ、呆気なくボクのエンジンは鎮火。気持ち的にはまだまだやれるのになぁ。
……それに比べてロベルトくんは息も上がってないし、汗ひとつかいていないようです(仮面の下はわかんないけど!)
「えっへへー!ししょーつよーい!!でもなんで全然疲れてないの!?」
「どうも。私はあまり動いてないですからね。カガリさんが向かってきてくださるので、楽させていただきました」
「ボクあんなに動き回ってるのに!なんで止まったまま全部避けれんの〜!?」
いろんな角度、いろんな立ち回りで攻撃しているはずなのに、ほとんど動かずに避けられるって……やっぱりししょーはししょーだなぁ……
「よく見て、それに合わせて動いているだけですよ」
そのリクツが、今のボクにはさっぱりでした………
でも、
「それに、カガリさんはまだ、持っている武器を全て使っていませんから」
ここでししょーからイミシンな発言が!
「え?全て使っていない?」
ボクは首を傾げながら考えました。 このナイフが『初めて貰った武器』なのに…他に何かあったかな?武器…武器…
「あ、確かに。ナイフにデスソースは塗ってないよ!」
武器という言葉からナイフの他に思いつくものといったら………ぽしゃった決闘で使う予定だった激辛チュロス。つまり、辛さが足りなかった!?
「そんなもので斬られたら、ヒリヒリするでしょうね。
塗ったら塗ったで、あとのお手入れが大変そうですが」
今度やってみよう。
でも、ししょーが求める答えとは一致していなかったみたいです。
「果たして、カガリさんの武器はご自身の身体やナイフだけですか?」
ナイフ……体…
…あっ!
ボクはなんて頭がカタかったんだろう!
そういえば武器=手に持って振り回すもの、なんて誰も、一言も言ってない!
「魔法、つかっていいの?」
「ええ。もちろんです」
ご自身で気づいていただけて何より、とししょーは続けます。
でも…便利な魔法ほど疲れやすいから…
「ここぞってときを狙いたいよね~!」
と意気込んでボクは立ち上がり、制服についた土を軽くほろいました。
「ね!ね!もっかいやろ~!」
「喜んで」
訓練その4: 持てる武器の全てをつかえ!
「じゃ、……いくよ!」
まずは…今日の訓練で学んだことを全部ぶつける!ししょーにまっすぐ斬りかかる。避けることは想定の範囲内。 次に氷上を舞う動きで背後に回り、そのままナイフで突く体勢に。
「…どうされました?」
ロベルトくんは、攻撃を外したボクが次の行動を思いつけず、硬直していると思っているでしょう。
「そのまま刺せば終わっていましたよ」
そんなはずはないのは、さっきの実践で経験済み。 多分そのまま刺す前に、弾かれるか、避けられるかのどっちかだったでしょう。 でもボクは…
攻撃を避けたあとの「ほんの一瞬の隙」
攻撃する体勢で硬直する「意外な動き」
この二つのハーモニーが重なり合う瞬間こそ
「ここぞというとき」だと確信したのです!
さぁて、ここでシショーに問題です。
今 ボ ク は 、 ど こ に い る で し ょ う ?
(ざくり。)
クラスコード・グリーンが「聴覚」を騙すスペシャリストなら
クラスコード・イエローは「視覚」を騙すスペシャリスト。
一度目の回転攻撃ののち、そのままの姿勢のボクを「幻視」として残し、気を取られている隙に『転移奇跡』で背後にまわる… 視覚トラップを台無しにするような『音』を立てることは、ボクの『耳』が許さない!
「そのまま刺せば終わっていた」…の言葉通りに、ししょーの脇腹を完璧にとらえたナイフが制服を貫き、体の奥まで通りました。 赤い、熱いものが流れてくる…… 多分、これを自分以外の誰かが目の前で流しているところを見るのは、初めてかも知れません。 やった!という達成感で満たされて……
「そう。それです」
……
……ししょーのその一言から数秒で それは一瞬で遠のきました。
案外すんなり、通るんだな。
ボクが斬られた時はもっと痛かったのに、元気があったら悲鳴をあげるところだったのに、
ロベルトくんの反応はジミでつまらないな。
それよりも、なんだか凄くぼーっとするな。
「さあ。まだ私は死んでいません。どうします?」
「……」
興奮も興味もすっかり抜けてしまって、あとに残ったのは
「疲れ」「眩暈」「息切れ」 そして……「タイクツ」の4拍子。
「つまんない」
ボクはナイフから手を離します。刺さりっぱなしのナイフはお構いなしに。
「シショー全然反撃してこないもん。ナイフの使い方の勉強にはなったけど…
こんなんで勝っても嬉しくないよ」
「私は『武器の使い方を教える』と申しました。お互い訓練で死ぬのは馬鹿らしいでしょう?」
訓練とはいえ、訓練だからと手加減をされてはやり甲斐がない。 確かにボクは、本気を出したししょーには勝てないかもしれないけれど、 それを実感できた方が逆に燃える。逆に弱い者を演じるなら、怯えたり嫌がったり そのあたりまでカンペキにやってほしかったな~!これがボクの正直な気持ち。
というわけで決闘はドロー!(でも可愛さではボクの勝ち!)ってことで、本日の訓練は無事終了。あ、このあと傷の手当やらちょろっとお喋りやらがあったんだけど、それは訓練の報告とは関係ないので今回は省略! でもでも、『武器』の使い方は学べたので、全く実りのない訓練ではなかったかな!
機会があったらまたお願いしようと思いまーす! その時には、訓練前に『本気で攻撃してこい』って念を押すの忘れないようにしないと!
まずはこの訓練の成果を、休校を延長させたあのコたちで試せないかな~!
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