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ガーデンでの生活を記録したり、報告書をボク用にまとめたり。
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    はじめての贈り物?

    「これ持って出てけ」

    ボクに初めてのプレゼントをくれたのは――





     4月29日の朝、キッチンからやけに激しい物音がするので、何か面白いことが始まるのだろうかと駆け付けたところ、そこに居たのはレオだった。
    ナイフで果物をいじめている。
    レオは緑の髪がイチゴのヘタのようにツンツンしているドールでボクの同期だが、メッシュの位置や目の色など、なんとなく『とあるドール』を鏡に写したあと上品さを消し飛ばしたような、そんな外見が前から気になっていた。
    彼がガーデンに来たのは今日から数えてちょうど一か月前のことだけど、ボクはそれよりも前に、一度彼と話したかもしれない記憶がある…のだが、それについて前に一度尋ねたところはぐらかされた。
    今日はもう一度徹底的に問い詰めるチャンスだったけど、それよりも優先して言いたいことがあったので機会を先送りにする。

    「この前寝落ちしたでしょ~~!せっかく準備したのに~~!」

    レオ、そして彼が入学して一週間と経たないうちに続けてガーデンにやってきた、ニンジン色の髪の毛をおさげにしたドール、ドロシーを歓迎するためのパーティーに肝心の主役の片方が姿を見せなかったので、不満をぶつけずにはいられなかった。
    とはいえ、ボクも先日訓練をしてくれる約束をドタキャンした前科もあるし、ドロシーの方はしっかりと楽しんでくれていたようでパーティー自体は成功をおさめているから、さほど気にしてはいなかった。
    ぶっちゃけ「不満をぶつけずにいられなかった」より、「パーティーをすっぽかしたことをネタにしてからかって遊びたかった」が正しいかもしれない。

    「…………………………………………………………………」

    長い沈黙のあと

    「…………わるかった」
    「ふふ~ん!わかればよろしいっ!」

    運良く他のドール達がいなかったこともあり、ちいさな風の音のようなレオの謝罪をボクは聞き逃さなかった。
    レオが打楽器でも鳴らすかのように果物を切り始めるのがあと3秒ほど早かったら、聞きとれなかったかも知れない。『え~?なに~?ぜんぜんきこえな~い』と追い打ちをかけることもできたが、レオがボクに対して謝罪をするという行動自体がレアだったので、今回はこれで勘弁してあげることにした。



    *


    その後だ。レオがいったん果物の虐殺をやめたまり場を出て行ったかと思えば、小さな袋を手に再び戻ってきて、ボクに手渡した。
    中身を見ても構わないがキッチンの外でやれというレオの言葉にしたがい、ボクはたまり場のソファに座って中身を確認した。

    中に入っていたのは、アイシングクッキー。 描かれているのは、ガーデンで一番かわいい、黄色紫ツインテールのドール…ボクだ。
    笑っている。
    今まで、ドールからお菓子を貰ったことは何度もある。入学したその日にも他のドールからクッキーを手渡されたのを覚えている。でもそれはあくまで
    「沢山つくったのであなたもどうですか?」と貰ったもの。つまり、誰に渡ろうと大差がないもの。
    …でもこれは…間違いなく『ボク宛』だ。
    ボクは、クッキーの笑顔の何倍ものそれを自分の顔に浮かべていたことだろう。

    「れおれおありがとっ!」

    別に相手が誰だからということはなく、お礼を言うのは恥ずかしかった。 だからキッチンにひょこっと顔を出し、再び果物をこらしめているレオの背中に話しかけるとすぐに引っ込んだ。
    「おう」という返事が聞こえたかもしれないけど、振り返らずに自室に帰った。

    「はじめてのプレゼントだぁ…へへっ」

    自室のベッドに横になりながら、カガリクッキーを眺めて喜びをかみしめる。 丁寧に描かれたその笑顔にかぶりつくまでには、もうちょっと時間がかかりそうだ……



    *


    って所で終わってたら凄く綺麗だったのよ。でも続きがあるんだな。

    その日の夕方頃のこと… 太陽が燃えてたから散歩に行こうと自分の部屋を出たとき、ペンが落ちていた。 拾い上げて誰のだろうと眺めていると近くの部屋の扉がガチャリと開き、中からドロシーが出てきた。

    「あれ…どこで……」

    ドロシーは探し物をするように、屈んで足元をきょろきょろとしている。

    「ドロシーちゃん、これ違う?」

    ドロシーが探しているであろうものを差し出す。

    「あ!それ!どこにあったの?ありがと……」
    「ちょっとまった」

    ボクはペンをいったん高く掲げる。ドロシーが立ち上がったとき、手に持っているものが見えたからだ。
    それは……食べかけのアイシングクッキー。
    頭を少し持って行かれているが、気にせず笑っているドロシーの顔が描かれている。

    「それなに?」
    「ああ、これ…ほら、カガリちゃんも貰ったんじゃない?他のドールから聞いたんだけど、
    このクッキー、レオ君が皆に配ったんだって!すごいよね!こういうの作れちゃうなんて…」 「へ」

    両目が豆粒になって2秒ほど硬直し、状況を理解する。

    …は~~~~~~!?!?!?!?
    これ皆に配ってるやつだったの!?

    パーティーを率先して準備したボクだけに与えられたご褒美クッキーだと思ってたのに!

    「あ……カガリちゃん!?」

    ドロシーの呼びかけもそっちのけで、ボクは自室に帰るやいなや、ベッドの上に置きっぱなしにしたクッキーに思い切りかぶりつき、瞬く間にお腹におさめた。


    れおれおのバカ!!!!!!!!!
    返して!!ボクのハッピータイム!!



    ――――――
    diary011「はじめての贈り物?」
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