「これからも色々なドールと仲良くしてください」
またご褒美が届いた。
また本だ。
「ガーデンのあゆみ」とある。あまり興味をそそられない。
…でも、前に貰った神話の本の第一印象もそんなもので、なんとなしに読んでみたら……
ということがあったので、とりあえず中を開いてみることにした。
……
……
数字。
なんかの文字。
活字。
また数字。
なんかの文字。
活字。
まt
きもいので閉じた。
***
「おやァ…? ノックの仕方も知らないどんな低俗クリーチャーかと思えばァ」
できればノックする機会など来ないで欲しかったドアを叩けば ヤツが顔を出す。
ぐるぐる眼鏡と、片側に集中して生えているツノ…そして憎たらしいオーバーリアクションが特徴的なドール…ジオだ。
「…貴女でしたか、ガリさん」
本が好きそうなドールなら誰でも良かったじゃないか。 図書委員のドールに、よく図書室に入り浸っていたと噂ななドール… 選択肢は色々あったはずだけど、どのドールを頭の中で思い浮かべても、 必ずあの
小生オジさんが邪魔してくる。だからやむなし。
「ん」
早く済ませてしまおうと、ボクは本をジオの胸の上あたりにぐいと押し付けた。
「…これは?」
「いらないから。ゴミをゴミ箱に捨てに来たんだけど?」
ジオは一歩退き、差し出した本の表紙を確認すると、やれやれと乾いた笑いを浮かべる。
「であれば、トラッシュルームは1階でしょう。 地図ぐらいはお読みになれますよねェ?」
「ちーがーう。こういうゴミはオジさん向きでしょ?ほら」
なぜ、いらなくなったコレの行先をトラッシュルームよりも来たくなかったココにしたのか、該当するページをあけて見せた。 よくわからない言葉の羅列の中に
「実験」という文字がぽつぽつと顔をのぞかせているページだ。
「ほう」
一瞬別人かともとれる声を発したかと思えば、眼鏡をしっかりと上げたあと 両手で本のそでを摑み、食い入るように書いてある文字を眺める。 釣れたらしい。
「…確かにこれは、『並以下のオツムのドール』には難解でしょうねェ」
釣れたのはいいけど、一言がいちいち余計。
「ちょっと!誰が並以下の」
「いやァそれにしても貴女にしては随分回りくどいですねェガリさァん?」
一言ずつ重ねるごとに、ニタリ顔も、声のトーンもハイになる。
「小生をォ。
喜ばせたいが為ェ。
わざわざァ!!
…尋ねてきてたと初めからそう言えばいいのに???」
「ばっ…」
渡した相手が喜ぶかどうかなんて大した問題じゃないのに……うまく反論できない。
そう……思い返せばそもそもこれを誰かに貸す必要すらホントはなかったはずだった。 でも……コイツに渡した方が「燃える」結果に繋がる…面白さを求めるボクがはじき出した結果に逆らうことができなかったんだ。 悔しいけど。
「お望み通りじっくり拝読させて頂きましょう……但し、ほんの数日で在るべき場所……貴女の懐へお戻ししますよ」
「え?だからボクはいらないって…」
「ゴミはゴミ箱へ、と言ったのは……貴女でしょう?」
「どっ……」
もう、サイアク。
「どういう意味だーーッッ!!!」
こうして、ボクが結局一ミリも得しない取引が成立したのだった。
Diary005 「ゴミはゴミ箱へ」
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