与えられた魔法を試したかった。
できれば楽しく。誰にも邪魔されない場所で。
その舞台に選ばれたのは、凍ったプール。
まずはスケート靴に履き替えて
銀板の上を華麗に滑っ
ツルッ
「わわわわっ!!」
……滑って転んだ。
やりなおし。
立ち上がって、滑って、また転んで
何度かそれを繰り返しているうちに
まだへっぴり腰だけど、どうにか滑れるようになった。
さて。本番はここから。
意識を集中させ、魔法がかかったとき、
なにが起きるのかをしっかりと思い描く。
イメージ通りに、ボクの身体がゆっくり輝きを帯びる。
自身の身体が光を纏う、
クラスコード・イエローの生徒に与えられた「発光魔法」だ。
体を光らせて一体何になるのだと思っていたけれど
ここなら「楽しく」使えそうだ。
ボクの身体の光を僅かに浴びて、足元の氷がほのかに光る。
傍へ飛んできた雪が、
触れればすっと消えてしまう光の粒へと姿を変える。
光の粒を巻き込んで、
そのまま ボクだけの―――
ツルッ
「ふぎぇんっ!」
集中しすぎて、バランスを崩した。
滑りも魔法も、まずは慣れないとダメだ。
せめて滑りだけでも、無意識下でも体がついてくるようにならないと。
でも、それさえなんとかなれば
「ボクがここでやりたいこと」が実現できそうだということがわかっただけでも、良い収穫だろう。
これから暫く、夜はタイクツしなさそうだ。
Diary002「ひまつぶし」
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