大事なものを忘れている、けれど何なのか思い出せない。
気を逸らしたくて、とにかく「燃える」ことを探した。
「タイクツ」を全てこわすために。
図書室のマギアビースト。
反応がおもしろいドール。
スケート遊び。
まだまだ、いろいろ。
入学からちょうど一か月後。
「欠けたもの」を思い出した。
「歌声」に関する記憶だ。
歌っているときに、大切なものを奪われたこと
何を奪われたのか、奪ったのが誰かは思い出せない。
一つ思い出せば、一つ「わからない」が生えて来る。
キリがないなこりゃ。
それから考える間もなくかみさま?が暴走し
辛気臭さに耐えられなくって部活に入ってみたりもして
決闘を挑んだドールにぶっころされ
ガーデンのあちこちに果物に似た愉快なのがたくさん現れ
リベンジマッチを挑む前に決闘相手がいなくなり
かわりに新入生が来てくれたと思ったら
その二日後にま~たグランドに集められたり。
立て続けにいろんなことがあり、
休校中とはいえ、報告書にまとめるのでわりと大忙しだったので、
「欠けたもの」について考える機会が少しずつ減っていった。
そもそも、思い出せなくてひっかかるものはあるけれど
思い出さなくても日常生活になにひとつ影響がないことに気づいてしまったのだ。
今はどちらかというと、こっちが楽しくやろうとしている時に、
水を差すようなどんよりした出来事が重なったことの方がイライラするってことの方が多くなったかな。トラブル自体は楽しいんだけど。
やっと日常が戻ってきたかという時、
自室に赤いリボンのついたプレゼントボックスが届いていた。
ボクへのファンからの差し入れかな?
鼻歌交じりで箱を開けると、中には…
「おぁ!武器だ!」 思わず興奮して声をあげた。
持ち手にピンクのリボンがついた『ナイフ』が入っていた。
持ってみると、確かな質量がある。強力な一撃を喰らわせることができそう!
できれば10日前ぐらいに欲しかったなぁ。
決闘で役立ったかもしれないのに。
みんなもコレを貰うのかな?あんまり持っているのを見たことがないような…
誰か試し斬りさせてくれそうなドールはいるかな?
そんなことを考えながら、貰った「武器」を手にかっこよくポーズを決めていると、部屋に備え付けられている端末に新着の通知を知らせているのに気が付いた。
『センセーから素敵な道具を支給します。有効活用してください』
まぁまぁ嬉しかったけど、どうせこんな箱に包んでくれるんならチョコレートの方がオシャレなのになぁ。 センセーってセンスないなぁ。
そしてもうひとつ、通知が来た。
ナイフを手に入れたことで、なんか長い名前がついている課題がひととおり終わったことを知らせるものだった。
それを目にした瞬間…
ボクは「欠けたものを取り戻す方法」を知って困り果て
「むりじゃね?」
と声を漏らした。
「ナイフの試し斬りをさせてくれるドールはいないかな?」などと考えるドールに
傷つけられない相手なんて、いるわけないじゃないか。
Diary008「みっしょんいんぽっしぼ~」
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