忍者ブログ
ガーデンでの生活を記録したり、報告書をボク用にまとめたり。
01
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31
  • 管理画面
    カレンダー
    12 2025/01 02
    S M T W T F S
    1 2 3 4
    5 6 7 8 9 10 11
    12 13 14 15 16 17 18
    19 21 22 23 24 25
    26 27 28 29 30 31

    あきないおもちゃ

    ボクには、友達と呼べるドールがいないから
    日記に書くのも「見ていて飽きないドール」「刺激のあるドール」のことだけ。







    ボクがガーデンに入学した頃には、
    既に在籍していたドール達の関係があちこちで築かれているように見えた。
    「友達」だったり「恋仲」だったり…入学したタイミングや年齢の垣根を越えて、その関係は育まれていた。
    ぶっちゃけた話、ボクは「友達」と呼べるドールはまだいない。
    正確に言うと、作ろうとしていない。理由はカンタン。面倒だから。
    思いやりとか信頼とか…なんか冷めちゃう。
    だから、話してて燃えるなぁと思ったら話すし、つまんなかったら放っておく。
    それが一番単純でいい。
    でも、そういう「トクベツな関係」に憧れを全く抱いていないかというと、そうじゃない。

    ドール以外の「友達」は、二体いる。 まじゅうのキーホルダーのマンジくんと、
    あるドールから譲ってもらったうさぬいのうーちゃん。
    お喋り?もちろんしないよ。ひたすら聞き役になってもらうんだ。
    聞いてもらうのに飽きたら……ボクが彼らの台詞をイメージして、お芝居する。
    みんなの前ではやらないけどね。
    これでお芝居にそこそこハマってしまって、演劇部にも入ったのだ。
    マンジくんたちには、思いやりも気遣いも必要ない。 でも、ずーっと大事にする!
    だから「友達」ってことでいいよね?

    「友達と呼べるドールはいない」けど、
    「見てて飽きないドール」なら何人かいる。
    そのうちの一人、クラスコード・ブルーのアザミについてまだじっくり書いたことがなかった(マギアビースト対策本部の報告書にも彼女のことを書いたけど、どちらかというとモトベさんとの会話がメインだったし…)ので、今ペンをとっている。

    彼女のことを「飽きない」と思っている一番の理由は、からかった時の反応がいちいち面白いから。あの手この手でちょっかい出しているだけで、結構いい暇つぶしになる。

    「……すごく気になってたんですけど、
    カガリさんどうしてそんなにマギアビーストにお熱なんですか?」
    「え?だって
    かわいいじゃん?
    強そうじゃん?
    飼ってみたいじゃ〜ん!?!?」

    これを言うとだいたいのドールは呆れる、苦笑い、ドン引きのどれか。
    でもアザミは 「まぁ、確かに」 と、はじめてボクの言うことに肯定した、とっても珍しいドール。

    「飼ってみたいとまでは思わないですけど、どこから来て、なぜ現れるのか……それは私も気になってます」
    「…案外、実技授業のひとつだったりして?」

    あの日…マギアビースト対策本部へ行った日も、モトベさんとの話を抜きにしても、そこそこ面白い時間を過ごすことができた。 本が好きなアザミはこんな風に、物事に対してあることないこと考察するから…

    飽きない理由の二つ目は、

    「校則とかめんどくて読んでないもん。 うっかり破っちゃったらお知らせ来るんでしょ?その時知ればいーやー的な〜?」
    「あはは…まぁでも、めんどくさいのを回避するのに覚えておいて損はないですよ」

    ボクに比べて丁寧な言葉で話すおとなしいコ…

    「え!?処刑!?なにそれ楽しそう!! アザミセンパイ、ちょっと今から校則十個くらい破ってくれません?」
    「ははは 10回ころしてやりましょうか??」

    と見せかけてそこそこの火力で返してくること。
    こんなことを仕掛けたら、どんな反応が返ってくるか色々試してみたいなぁなんて ……あ、いけないいけない。なんか某実験スキスキクソオジドールみたいな書き方しちゃった。


    *


    「モトベさんってさ~、優しいけどめっちゃカタブツだったねぇ~!」

    …今となっては全員に対してすっぱり辞めちゃった「センパイ呼びと丁寧語」(理由?飽きちゃったから!)を一番最初に取っ払った対象もアザミだった。
    特にそう決めたわけでもなく、会話の流れでな〜んとなく、すこ〜しずつ、そうなっただけ。
    多分この日あたりから少しずつ「センパイ」じゃなくて「オモチャ」として見るようになったからかな?

    「そうですね……薄々感じてましたけど、無愛想というかなんというか……」

    対策本部から寮へ戻る途中、道から逸れた場所で立ち止まり、モトベさんとのやりを振り返る。

    「ま~、愛想振りまいて他人の顔色伺うような人にああいうお仕事は絶対務まらないから、にこやかな対応は期待してなかったけど……思った以上にアタマカタくてびっくりしちゃった!」

    事情があるとはいえ、ビーストは討伐するもの!の一点張りでなかなか頑固だったモトベさんからこれ以上情報を引き出すよりは、いろんなビーストに挑み、そこから相手を知る方が良さそうだ、と、ボクらの意見は一致した。 だれかと意見が噛み合わないことはごく普通のことだから特に気にしてなかったけど、ここまでスムーズに意見が合うのは珍しい。
    けれど決して似たもの同士ではない彼女がなにを考えているのか、少し興味がでてきた。

    「…ねぇ。 アザミセンパイはなんでそんなにマギアビーストを知りたいの?」
    「…マギアビーストだけの話じゃないんです。 私の夢を叶えるためには、このガーデンの誰よりも強くならなきゃいけないんです。 だからこそたくさん知る必要があります。ドールとの戦い方。獣との戦い方。マギアビーストとの戦い方…」

    だからこそ、ボクが初めてアザミと出会った時にセットになっていた、ナゾ多き黒子ドール「シキ」に、訓練がてらいつもボコボコにされているのだと彼女は続ける。

    「へぇ~。アザミセンパイの夢って、なんなの?」

    好奇心に任せて、更に踏み込む。

    「魔王、ですよ。子供っぽい夢でしょう?」

    アザミはすんなり答えてくれた。 いかにも本の虫が、本の物語に影響されて思いつきそうな夢。

    「いいじゃん!」 「世界で一番ワルいヤツになるんでしょ!?面白そうじゃん!」

    ボクは活字びっしりな本は嫌いだけど、字が少なく、挿絵のある本ならそこそこ読む。 だから「魔王」を「ヒーロー」が倒し、「お姫様」を助ける、なんて話はむしろ好きな方だ。
    だからお世辞抜きでこう言った。
    本の中で魔王は、残虐非道の限りをつくしていた。
    それはもう、「まじゅうとちいさないきもの」の魔獣が可愛く見えるぐらいに。
    だから、

    「…悪いことをするという目的はないですけど、
    自分の道を、自分のしたいようにまっすぐ進めるようにはなりたいです」

    という彼女の返答にちょっと違和感をおぼえた。
    悪くない魔王って、なんだろう。

    「そういう意味では、あなたみたいな人かもしれませんね……」

    ボクは魔王じゃないもん。歌って踊れるかわいい魔法少女だもん。
    反論する前にアザミが勝手に語り始めた。

    「魔法を極めたドールになりたい……
    そう思ってシキさんに決闘に挑んだら、それはもうボコボコにされました。
    ほら、今とだいぶ違いますけど……カガリさんが入学する前はこんな感じだったんですよ」



    そう言って、ボクにナイトガーデンカードを見せてくれる。
    ボクも入学したタイミングで貰ったカード。これを持っていると、夜の間校則が免除になる。昼も免除にしてくれていいのにな。
     そこに映っていたアザミは、今よりも髪が長くて、自信がなさそうで、ひとことで言うと

    「キャハハハ!! なにこれ~!!!友達できなさそ~~!!」
    「はは、実際友達なんていなかったですよ」

    全く気にしていない様子で、アザミは笑う。

    「勝手に壁作って、一歩踏み込めなくて、皆が輝いてるのを見て良いなぁと眺めて、
    ただそれだけ」

    壁をつくっている…といえば多分、
    目の前のドールを「あきないおもちゃ」…良く言えば「いい火種」としか思っていないボクも大概壁をつくっているといえばそうだ。

    「…でも、今はそこそこ踏み込めるって感じなんだよね?
    ……どうせならさ、最高のワルになっちゃおうよ。
    でっかい組織にケンカ売っちゃうぐらいのわるーいヤツにさ? その方が絶対『燃える』って!!ね?ね?」

    どうせ「魔王」と名乗るのなら、夢はでっかく世界征服!
    それぐらいの勢いでゴール目指してくんなきゃ、つまらない。

    「最高のワル……ですか。それも悪くないかもしれませんね。
    いざという時には皆を率いて抗えるくらいの力を持って……」

    どうやらアザミもその気になってくれたようだ。

    「その時は是非協力させてよ!
    強くなってさ、でっかくなってさ、更に面白くしてやろうよ?」
    「……あなた…… なーんとなく思ってましたけど、結構なイチモツ抱えてますよね……
    まぁでも、そのくらいの方が生きやすそうです」

    ボクが便乗してノリノリでいると…アザミも珍しくにっこり笑った。
    やっぱりちょっとヘンだ。魔王には似つかわしくない笑顔。
    これは邪悪な笑いのつくり方から始めるべきだね!

    「?そんなのないって!
    ボクは『燃える』ことには全力で乗っかりたいだけだよ?
    極端な話、それ相応の『燃える』ことに巻き込んでくれるなら 喜んで周りの人を傷つけるし、 喜んで死んであげるよ?」

    ボクの言葉に嘘偽りはない。燃えさせてくれるのなら、
    誰かの命を犠牲にするのも、自分の命を差し出すのも安い安い

    「なるほど、もっと純粋な気持ちでしたか…
    …それはとても、ありがたいです」

    「きっといつかは……誰かの力なしでは前に進めなくなる」

    アザミはそう言ってまた笑うけど、目がちょっと真剣な感じに見えなくもなかった。

    「その時には是非とも、道を照らす「かがり火」になってくださいな」

    なんだかちょっといい話に纏めようとしてるけど、

    「気がノレば、ね!」

    いつも助けてあげるとは言ってないもんね。

    「いよーっし!立派な魔王になるためにまずは校則10個破ってみよーう!!」
    「カガリさん。魔王になる前に芽が摘まれますそれ」

    このドールがいつか魔王になって、平和な日常をぶっこわしてくれるのを特等席で眺める。 なんて燃える展開なんだろう! 悪と略奪の物語『魔王アザミへの道』まずは第一章!楽しませてもらうよ!
    …ってテンション爆上がりで寮に戻ったっけ。

    まさかこの後、『平和な日常』の方から勝手にぶっ壊れてくるなんて思いもしないよねぇ。

    あーおもしろ。





    Diary006 「あきないおもちゃ」
    PR

    [24]  [12]  [23]  [10]  [42]  [13]  [20]  [40]  [16]  [19]  [18


        ◆ graphics by アンの小箱 ◆ designed by Anne ◆

        忍者ブログ [PR]